亜里香と雄輝の(非?)日常は特に何もなく過ぎていった。

前から変わったことといえば、相良家に帰る必要がなくなったことと、

学校へ車登校になり、以前より生徒の注目を集めていることくらいだろうか。

だが厄介なことが一つ。なぜか(・・・)まさかのモテ期到来である。

今だって、朝机に入っていた手紙の指示通り中庭へ行けば、

待っていたのは高1で一番のイケメン男子である。

「相良さん、だよね?」

「はい、そうですけど。ご用件は?」

亜里香はかなり冷たく対応した。

「ずっと前から好きでした!

俺と付き合ってください!」

亜里香は眉をひそめた。

「ずっと前から?そんなの信用しない。

それに、あたしが花嫁になったってことは、知れ渡ってるはずなんだけど。」

あれから5人に告白されたが、みんな亜里香のことは直接は知らなかった。

「違う!

実は、入学式で一目ぼれしたんだ。

それからずっと好きで、でも告白する勇気がなかった。

でも、いろんな奴が告白してるって聞いて、決心して、今に至るんだ。

花嫁なら、恋人じゃないんでしょ?」

亜里香は言葉を詰まらせた。

その通りだ。亜里香と雄輝は恋人関係ではない。

「ね?だからさ、b「ごめんなさい。あなたとは付き合えない。」」

亜里香は相手の言葉を遮った。

たしかに雄輝は彼氏じゃない。

それでも、脳裏に浮かぶ、ふわりと微笑む雄輝も、

ほかの人には冷たい、クールなところも愛おしいと思う。

相良家を出てからまだ1週間ほど。

雄輝のことなど、まだほとんど知らない。それでも、

「あたしは、雄輝が好きだから。あなたとは、付き合えない。」

そういって、亜里香は踵を返して教室に戻った。





「モテ期だねえ~」

美紗が亜里香をひやかす。

「マジ迷惑なんですけど!

あたしが花嫁だって、みんな知ってるでしょうに。

それに、こんなこと雄輝に知られたら、ヤバい目にあうよ。」

「みんな変な勇気持ってるよね~。

コテンパンにされてもいいのかな?」

世羅が賛成する。

「『雄輝が好きだから』だってー

こんの、リア充が~」

麗羅が亜里香をつっつく。

「は!?聞いてたの?」

「そりゃあ、学年1のイケメンをどうやって振るのかなあ~って気になるじゃん。」

「気にしないでよ!」

「で?いつ告白すんの?」

真顔で美紗が尋ねた。

「こ・く・は・く?」

「だーって、虎ノ門様に好きって言ってないんでしょ?」

世羅の指摘に、亜里香はうっと言葉を詰まらせた。

「ほーら、そんなんだと、浮気されるぞー?」

「やめてよ美紗ー!雄輝はそんな非常識なことしないよ!」

「冗談だよー」