「誰だ?」

驚いたように雄大が尋ねた。

鬼澤(おにさわ) 華子(かこ)殿ですわ。

あの方、雄輝様に気があるご様子で、わたくしが婚約者になった時も、

たいそうご立腹だったようですわ。わたくしにはなにも致しませんでしたが。」

うんうんとうなずいて、真輝が警告を発した。

「沙希さんは、虎ノ門に次ぐ名家、虎谷家の出身だから手を出せなかったんだと思うけど、

亜里香さんは違うでしょう?何か仕掛けてくるよ。」

雄大は参ったなといった様子で、頭をかいた。

「鬼澤家か。鬼のあやかしでは鬼崎(おにざき)鬼瓦(おにがわら)に次ぐかなりの名家じゃないか。

鬼は虎と同じくらいの権力がある・・・そういえば雄輝、亜里香ちゃんの護衛は、使役獣だけか?

さすがにそれでは…」

優莉も心配そうに亜里香を見やる。

「護衛は必要ないと、亜里香が言ったからな。」

「でも、何かあった時ではもう遅いのよ。」

「いえ、何かあれば、自分で何とかできます。というか、いたしますので。」

「でも、女の子でしょう。それに、素手でやりあえるような相手ではないでしょう。」

「いやいや、母さん。だれも素手で鬼に立ち向かおうとはしないさ。」

「じゃあ、どうするの?じらさないで教えてちょうだい。」

雄輝は亜里香を促して、亜里香は立ち上がった。

杖を取り出して、6つの抹茶を出した。

「どうぞお飲みください。大したものではないと思いますが。」

4人はあっけにとられてポカンとしてしまった。

「ど、どーやったの!食べ物を出現させるのは、どのあやかしでもできないはず!」

「申し遅れました。あたし、魔女なんですよ。」

「魔女、とおしゃいますと?・・・とんがり帽子をかぶって箒に乗って空を飛ぶあれでございますか?」

目を白黒させながら、沙希が尋ねた。

「そうですよ。」

「えー、なにそれ!聞いたことないんだけど!」

真輝が目をキラキラ輝かせた。

亜里香はもう一度杖を振って、紙を4枚出した。

「そこに魔族に関しての簡単な説明が載ってます。

わからないことがあれば、心の中で紙に聞いてみてください。

下の白紙の欄に答えが出てきますから。

まだはっきりしてないことは出てきませんが、ある程度はわかると思います。」

4人はいまいちよくわからないまま、プリントを眺めた。

「えーと、魔女だから、護衛は必要ないと。」

雄大が確認する。

「はい。自分の身は自分で守れます。

それに、周りの人が多いと、あたしの呪いが当たってしまうと大変ですから。」

「じゃあ、亜里香ちゃんを信じて、護衛はなしにしようか。

ただし、もし護衛がいないと危ないとなると、必ず護衛をつけるからね。」

「はい。ありがとうございます!」