「で、ほんとの目的はなに?」

急に亜里香が真顔になって尋ねる。

「やっぱり、気づいてた?亜里香、席変わって。」

夢愛も顔から笑みを消し去った。

亜里香が立って、夢愛がそこに座った。

「名前は、虎ノ門雄輝、だったかしら?」

静かに、雄輝をまっすぐ見据えながら、夢愛が話し始める。

「もう聞いてると思うけど、この子は魔女。しかもその実力は世界トップクラス。

これから、あなたの花嫁として、しばしば世間に出るのでしょう?

その時に、この子が魔女であることが、決してばれないようにしてほしいの。

亜里香は、優しいし、人一倍責任感がある。

もしばれた時、自分以外に魔族がいるということを、この子は隠すはずよ。

でも、そうすれば、魔法に頼りたい人はみんな、亜里香の所へ来るわ。

それがどういうことか、わかるでしょう?」

「ああ。」

雄輝もまた、静かに答える。

亜里香は世界トップレベルの魔力を持つ魔女であった。

魔女は県内に5人しかいない。いとこの夢愛は世界一の魔女で、幼馴染の美紗とその両親も、魔族である。

「そう。なら、肝に銘じておきなさい。

もし何かあれば、わたしが直接、何かさせていただくわ。

それと、この前の一件で、相良家は亜里香が魔女であることに気づいた。

元々魔族の存在は知ってるから。

しかも虎ノ門の花嫁ときた。何をしでかすかわからない。

あの人たちからも、きっちり亜里香を守りなさい。

いいわね?」

「はい。肝に銘じておきます。」

ふっと笑って、夢愛が立ち上がった。

雄輝も立ち上がる。

どういうわけか、二人はきつく握手しあった。

「亜里香をよろしく。」

「はい。いわれなくとも。」

両者は微笑みあった。