「学校は楽しいもん。友達にも恵まれた。

あの家でいても、学校に行けば友達がいるから、頑張れた。

学校は変わるつもりない。」

雄輝はふっと笑った。

「そういうと思った。あの使役獣は連れて行け。」

昨日、雄輝が亜里香のために作った使役獣。

ミニサイズのとってもかわいい子猫の姿をしている。

「あ、あの子どこ行ったんだろ?」

「ミャー」

ここにいるよ、とばかりに亜里香のポケットから子猫が顔を出した。

「あ、いた!」

亜里香は子猫をテーブルに置いた。

「そういえば、名前決めてないや」

「名前?」

雄輝が首をかしげる。

「こんなにかわいいんだもん。名前ほしいよね?」

「ミャー」

そうだと言いたいかのように子猫が返事をした。

「ほら、ね?なーにがいいかなあ?」

ご飯を食べながら、亜里香は子猫をじーっと見つめた。

「あ、目が瑠璃色。そういえば、ら行とま行名前ってかわいいなって前から思ってたんだよね。

そうだ、瑠海(るみ)!瑠海にしよ!

彩海さんの、海ってかいて、みって読むのいいなと思ったんだ!

瑠海?」

亜里香が呼びかけた。

「ミャー」

「気に入ったみたいだな。

…そうだ、今日の予定だが、本家に行って、父さんと母さんにあわs…「亜里香ぁ!」な、なんだ?」

「申し遅れました、亜里香様、御来客です。」

飛び込んできたのは夢愛(ゆあ)。後ろから来た虎牙が来客を告げる。

「夢愛おねえちゃん!」

「誰だ?亜里香には姉はいないだろう。」

「違うよ、いとこだよ。今大学生。」

亜里香が説明した。

「もーう、花嫁って本当なのね!あいつらマジざまあだわあ!」

キャッキャとはしゃいでいる。

「なんでわかったの?」

口を挟むように亜里香が尋ねる。

「確実に亜里香に誕プレを届けようと思って、夜家に行ったんだけど、

亜里香いないっていうから、問い詰めたの。はい、誕プレ。」

亜里香は包みを開けた。出てきたのはネックレス。

「わあ!かっわいい!てか、これ、一個目を南乃花にとられたから2個目でしょ?

お金、大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫。バイトで稼いでるもん。」

亜里香には双子の妹がいる。

両親に可愛がられる妹が。

亜里香はひどい扱いをされてきた。

すくなくとも、亜里香は両親からの愛を感じたことはない。

たたかれることもしばしばだった。

味方といえば、いとこの夢愛と、友達の美紗(みさ)世羅(せら)麗羅(れいら)くらいである。

この家に来たのだってつい昨日の話である。