「し、使用人!?

わたくしどもはそこまで大きなことはしておりません!」

もう少し軽い処罰だと思っていたのだろう、

鬼澤夫妻はもともと青かった顔をもっと青くした。

「まだ反省できぬか?

刑務所にいるよりは反省しやすいだろうと思って、

横領には気づいていないふりをしたのだが。」

「横領までしたのか!?」

雄輝も驚いて声を上げた。

「バレぬと思ったのだろう、

三度ほど、鬼崎から金を持っていっている。

鬼澤が不自然なほどに金持ちなのはそのせいだ。

バレないわけがないのにな。」

亜里香は二人の顔を見た。

これでもかというほど青くなっている。

「さすがに懲りたみたいですし、その処罰でいいのではないでしょうか?」

雄輝も同意した。

「そうだな。それでもなお、何かしようとすれば、また考えればいい。

亜里香に手を出したりすれば、俺が自ら手を下す。」

「か、かしこまりました。」

「いやよ!」

鬼澤家の妻が叫んだ。

亜里香の前でひざまずき、亜里香に懇願した。

「これまでの数々のご無礼をどうかお許しください!

あなた様は大変すばらしいお方だとお聞きします。

どうか、これまでのことをなかったことにしてくださいませんか。」

急に、物陰から何かが飛び出した。妻に直撃し、「いたいっ!」という悲鳴が聞こえた。

「いーかげんにするにゃ!」

瑠海だ。怒っているのか、いつもより少しばかり大きく、

小さめの牙も生えているようだ。

どうやらかみついたらしい。

「じぶんがしたことをしにゃかったことにしにゃい!」

瑠海がまた噛みつきそうだったので、亜里香は瑠海を捕まえた。

「大丈夫だよ、瑠海。そんなことさせないから。

ありがとね?」

それを見た鬼太郎は、

「もうよい。埒が明かない。

出て行け。そこにお前たちの教育係がいる。」

当主の方は出て行ったが、妻が出ていきそうにない。

亜里香はしびれを切らし、魔法で強制的に追い出した。

「この度は本当にすまなかった。」

鬼太郎が亜里香と雄輝と、そして亜里香の横に「おすわり」している瑠海に再び頭を下げた。

「鬼崎さんは悪くありません。

たまたまあたしが魔女でしたから、無傷ですし。

あの人の手下?がなんかいいに来た時も、瑠海が対処してくれましたし。」

「ほう。その瑠海というのは、使役獣か?」

「ああ。護衛にな。そういえば、瑠海。

なぜ鬼澤が亜里香に会ったとき、何もしなかった?」

雄輝が思い出したように尋ねた。