「見当違いはあなただけでございますわ。

雄輝様はなぜ、こんなクズ女をお選びになったのかしら。」

亜里香は怒りがわいてくるのを感じた。

指先を扉に向けて、応接室にシールドを作る。

そして、言い放った。

「仮にあたしがどうしようもないクズ女だと仮定しましょう。」

「それが事実でございますわ。」

「そうだったとして、雄輝がクズ女を選ぶようなクズの男だとおっしゃるのですか?」

華子は口をつぐんだ。

「それ…は、…花嫁だから仕方ないのでしょう!」

「は?

いやいや、あたしがあなたの使いの方に申し上げたでしょう?

なぜ、あたしかなんて、花嫁だからわからないと。

それで納得しなかったから、こちらへいらっしゃったのでは?」

「雄輝様はお優しいですから、あなたを放り出さないのでしょう。

本当は、あなたをおそばにはおきたくないはずでしてよ!」

「ああ、そう。」

「今すぐこのお屋敷から出ていきなさい!」

いやいや何様だよと思いながら、亜里香は負けじと言い返した。

「なんで、ここの女主人が、客にここを追い出されないといけないわけ?」

亜里香は敬語を捨てた。

敬意を払う必要は、全くないと判断したのだ。

「あら、ならば実力で追い出しますわ。

わたくしは、鬼のあやかしでございますから。

人間などには負けませんわ。」

ああ、と亜里香は思った。

家柄がどうのこうの以前に、この女は自分より格下だと思っている

ヒト族が雄輝とくっつくのが嫌なのだ。

…亜里香はヒト族ではないのだが。

「へえ~、それが、普通の人間じゃなければ、どうなんでしょうね?」

「普通でなかったとしても、所詮は人。

鬼に勝てるわけがございませんわ。

さあ、ひどい目にあいたくなければ、出て行ってくださいな。」

「ん?ム・リ!」

だって、暴れてもいいように、シールド張っちゃったもん、

しばらくしないと解除できないし、とか思いながら、亜里香は笑顔で答えた。