もう狭川くんには関わらない。
そう思っていたのに。
その日の学校の帰り道、私は彼に待ち伏せされていた。私の家の帰り道を知っているらしい狭川くんは、私が来たことを確認するなり「お昼はごめんね」と謝ってきた。


もう関わりたくないから、無視するように顔をしかめ狭川くんの横を通り過ぎようとした時、


「──…嘘なんだ!!」


と、狭川くんが大きな声を出した。
その声にビクっと、肩をふるわせた私は、狭川の方をつい見てしまう。


嘘?
何が…


「乙和の事で話がしたい…。時間作れないかな?」



乙和くん…?

狭川くんの顔は、いつもの笑っている顔じゃなかった。どこか真剣で、どこか悲しそうで。


「本当は俺、小町さんのこと好きとか、そんなんじゃなくて…」


申し訳無さそうに呟く男。


「小町さんと親しくなれば、乙和のことを知れると思ったんだ……。あいつ何も教えてくれねぇから…」


何も教えてくれない…。


「勇心も、まったく口割らねぇし」

「…」

「もう小町さんしかいねぇと思って…」


私しか…。


さっきまで〝はるちゃん〟と言っていた狭川くんはもういなく。


「なあ、小町さん」


目の前にいるのは、私と同様、何も知らない乙和くんの友達。


「──…あいつ、どっか、体悪いの?」