ティーゼも、祭りの初日には、英雄の帰還を祝う演説等を町の広場で聞いた。英雄とその仲間達が、無事に半魔族の王を打ち破り帰還した事、この町も戦争に巻き込まれなかった事を皆で喜び、見知らぬ周りの人間も巻き込んで、二日二晩は酒を飲んで盛り上がった。

 王宮では、連日、貴族や王族達による華やかなパーティーも続いていた。魔族領側でも祝いがあり、昨日の夜も、深淵の森の方角から盛大に花火が上がった。


 この世界では、人間と魔族と精霊が共存していた。


 肉体を持たない生粋の精霊は、魔族とは違って人界に領土を持たず、精霊界で暮らしている。精霊の血が強い人間は、人としての寿命が終わると、精霊王が魂を迎えに来て精霊界に渡って暮らすといわれていた。

 ティーゼを昔から知っている町の人々は、彼女が肌を晒すような薄着や、町娘の格好をしない理由を知っている。世界が半魔族により荒らされ始めた頃、彼女は当時遊んでいた少年達と騒動に巻き込まれ、鎖骨の下から胸元にかけて、大きな傷を負ってしまったのだ。