ベルドレイクが、深い溜息を吐きながらこう告げた。

『魔王の希望もあり、明日、そちらに躾けられた飛竜を四頭寄越す。辺境騎士団のクラバート団長は、飛竜が到着次第、魔王と宰相、マーガリー副団長とティーゼ・エルマを連れて王宮へ帰還せよ。これは陛下の勅命である』

 クラバートは、数秒ほど頭が真っ白になった。

 つまり、魔王が舞踏会でマーガリー嬢をエスコートするタイミングを利用して、クリストファーは、ティーゼを呼び戻すつもりなのだ。それまでに彼の方は準備が整えられるだろうし、万全な用意でもってティーゼを迎えるという計画に違いない。

「いやいやいやいや、待って下さい。それ、マジですか!?」
『ちなみに、ティーゼ・エルマは竜の騎乗経験がない。誰かが飛竜に乗せて手綱を引いてやらなければならないが、英雄は直前まで『準備』に忙しいからな。彼は、お前ならば良いと言っていたそうだ。他の誰かであったなら、手足を切り落としてしまえる自信があるらしい』
「うちの英雄が物騒過ぎる! というか、なんで俺が指名されるんです!?」

 騒動関係で言葉を交わした事はあるが、プライベートな付き合いをした覚えはない。

 すると、ベルドレイクも困惑を露わに眉間に皺を刻んだ。

『彼は、一度見聞きした人間は忘れないそうでな。なんでも、お前の人柄は嫌いではないと語ったそうだが……私も詳しい事は知らん。お前は、そっちの部隊の中で一番戦力があるし、護衛役としても適任だろう』