クリストファーは、幼馴染の少女が暮らす土地の平和を守るため騎士になった。

 彼はいずれ、早いうちに彼女を養えるよう、爵位を継ぐべく知識と力を得る事を惜しまなかった。二人で生活しても問題にならないよう、徹底して家事力も身に付け、出家した場合にも暮らしてゆける知識や技術も習得している。

 つまり、もうドン引きレベルで完璧に準備し、整えてあるのだ。

 無駄な事を一切嫌うようなクリストファーが、姫との問題を上辺だけ穏便に済ませたのも、二人の未来に余計な争点を置かないためだろう。

「えぇと、ベルドレイク総隊長? その、姫は素直に諦めてくれたのですか?」
『悲しんではおられたが、愛する人がいるという彼の言葉に反論はしなかった。うまく言いくるめていたところを見ると、将来の不安要素になる確執は作りたくなかったのだろうな。むしろ味方に引き入れていたようにも見える』
「まぁ、女の子同士の確執が一番面倒ですから……。それで、英雄は今どちらに?」
『陛下達と、段取りについて話し合いを進めている』
「は? 段取り?」