これまで詳細については人に話した事はなかったから、ぽつりぽつりと語る間に何度も言葉を途切れさせてしまったが、ルチアーノは普段のように冷やかす事も、話を遮ることもせず聞いてくれた。

 大怪我で大人達に叱られ、心配されて泣かれた事。全員が最低でも十日間は療養のためベッドから出られず、その間、クリストファーが何度もお見舞いに来ていた事。皆で彼を励まして、ティーゼも仲間達に励まされた事……


「ルチアーノさんも言ってたじゃないですか。女の子だと、傷一つで嫁の貰い手がなくなるって。クリストファーは貴族として教育を受けているから、多分それを気にしているんだと思います。怪我が治るまでの間は毎日花を持って来て、すっかり治った後も、時間があれば都度様子を見に来ていたぐらいです」


 話している間に、カップに半分残っていた紅茶は冷たくなってしまっていた。風が二人の間をすり抜け、ティーゼの柔らかい髪をすくっていった。