すると、様子を窺っていたルイがこう言った。

「僕には想い人がいるんだよ、クリス。その件で、彼女には少し協力をお願いしていたんだけれど。僕が彼女と友達であるように、ルチアーノとティーゼも仲の良い友達同士だ。あまり彼女を責めないであげて」

 ルイは大人びた優しげな微笑みを浮かべ、諭すようにクリストファーへ言葉を続けた。

「久しぶりの再会だったら、ゆっくり話し合わなくちゃ分からない事もあるだろう。もし良ければ、後で僕の別荘へおいで。美味しい紅茶もあるから、そこでティーゼと話すといい」

 ルイの提案に、クリストファーは反論しなかった。ティーゼを見ると、普段の落ち着いた様子で「ごめん」と小さく詫びて、悲しそうに視線を落とした。


「――僕は、ティーゼが遠くへいってしまうと考えるだけで怖くて、心配になるんだよ…………」


 本心を吐露するような声を聞いて、ティーゼは、必要以上の心配を彼にかけてしまっている現状に胸が痛んだ。