母上の目覚め、そして始祖の転生があることが知れると、俺の周りは一気に慌ただしくなった。
俺が転生を保護していると、すぐに知れ渡ったからだ。
一目逢ってみたい、どのようなお人なのか、と、俺への文が山と届いたのだ。
「おーおー、真紅は大人気だなぁー」
小路一派の各家から届く文をまとめてぐしゃりと潰して、庭で水やりをしていた縁に声をかけた。
「縁―、暇なときでいいから、これ燃やしておいてくれ」
「これ? ……いいの? そんなの燃やしちゃって。黒藤がそんな態度だから陰口叩かれてんのよ」
腰に手を当てて怒る縁だが、俺にダメージはない。
「ごみだ。ちょっと出てくるから、留守番頼む」
「わかった。昏くならないうちに帰ってきてねー」
「おう」
一つ肯き、羽織を手にして庵を出た。