言いよどんだ桜城くんは、そっと私の方を見て来た。その意味がわからず瞬く。

「……兄貴は、大事な子の傍に他の奴がいるのが赦せないみたいです」

……大事な、子? 黎は、恋人はいないと言っていたけど、そういう対象はいるんだ……。

桜城くんの言葉を咀嚼するようがんばったけど、なんだか気持ちが重くなっただけだった。一方の白ちゃんは私よりも解釈しているのか、納得している様子だ。

「それ以外には?」

「特には変にも思いませんでした。……俺が桜城としては血が薄いのは知っているでしょう。そう問われても……」

「鬼人としての話じゃない。兄弟としての話だ。お前は誰より兄を見て来たんだろう?」

「―――」

白ちゃんにそう詰められて、桜城くんは唇を引き結んだ。

「俺は……兄貴とは逢わせてもらったこと自体、少ないですから」

やっぱりそうなんだ……黎も、桜城の家にいたころはあまり接触がなかったって言っていた。

「では、目に見えて体調の異常はなさそうだったということでいいのか?」

「はい……。いつもと変わりない、としか見えませんでした。ですが、兄貴は――」

「鬼人だが、吸血鬼でもある。真紅の血は退鬼のもの。……真紅の血を得た黎明のの命が危うくならないか、それが真紅の心配か?」

核心を突かれて、唇を噛んで肯いた。声に出して答えれば、涙があふれてしまいそうだった。

私の血は、鬼を殺す。

白ちゃんは表情を崩さず答えた。