放課後、線路脇のフェンス越しにホームを見つめる。地元が同じだから、最寄駅は一緒。ここで待っていたら、いつかは律も現れる。せめて最後に姿だけ見たかった。
 ──『まもなく電車が参ります。白線までお下がりください』
 アナウンスのあと、電車が訪れる音がけたたましく鳴り始める。数秒してホームに滑り込んでくる電車。降りてくる人を目で追うと、律の姿が見えた。
 遠くからでも分かる。律だ。やっぱり好きだ……。
 でも、このままじゃよくないってこと自分が一番知ってる。

【別れよう】

 スマホでメッセージを送った。
 世の中は、便利になった。どこにいても離れていても、スマホひとつで相手に連絡をすることができる。小学生の頃では考えられなかったくらいだ。

【なんで?】

 すぐに既読がついて、返事がくる。

 ──他校だと、絶対すれ違って別れるよ。

 お姉ちゃんが言った言葉が今になってようやくしっくりくる。

【最近、すれ違ってばかりだから】

 あの頃の私は、一体何を信じて〝大丈夫〟なんて答えたんだろう。未来に希望を持っていたのかな。私たちなら大丈夫って思ったのかな。

 既読が、ついた。
 でも、返事がこない。
 それがきっと答えみたいなもので。

 知ってたはずだった。最近、彼が素っ気なくなったこと。帰り時間も合わなくなったこと。その証拠に最近は【先帰ってて】が決まり文句のようになっていた。
 付き合いたては、よく頻繁に電話をしていた。声が聴きたかったから。でも今では、メッセージアプリばかりで。画面に映し出される文字だけでは、思いなんて伝わらなかった。

「好き……だったのになぁ」

 告白は、私がした。『俺も今日言おうと思ってた』ってそのあとに教えられる。まるで運命みたいだと思った。
 あの頃の私は素直だった。今の私は素直に気持ちを伝えることができなくなった。まるでそれは、天邪鬼みたい。

「私の初恋だったのに……」

 よく初恋は、実らないって聞いたりするものだけれど、やっぱりそれは本当だったのかな。
 それとも私のこと好きじゃなかったのかな。よく考えてみたら、〝好き〟って言葉で言われたことなかった。告白の返事だって『俺も』ってそれだけだったし。楽しそうに笑っていたけれど、それは友達としてだったのかな。付き合ってみて、なんか違うなって思っちゃったのかな。

 付き合ってるって思ってたのは、私だけだったのかな。一方的な恋だったのかな。

 ──プルルル……

 突然、スマホが着信する。
 画面には、「牧田律(まきたりつ)」と表示されていた。