「アメリ―……エミーリア……」

 ヴェーデル伯爵の横に並ぶよう指示された二人は黙って俯きながら向かう。

「アクス公爵夫人より訴えがございました。アクス公爵とヴェーデル伯爵夫人が不倫関係にあると。ヴェーデル伯爵夫人、何か申し開きはありますか?」
「いえ……ありません」
「お前っ!!」

 目を虚ろにし、全てをあきらめたかのような表情を見せるアメリ―はその場で顔を手で覆い、泣きながらへたり込む。

「よく認めましたね。不貞行為についてもヴェーデル伯爵はご存じで証拠も見ているそうですね。そうですよね、ヴェーデル伯爵?」
「私は知らない」
「あなたっ!!」
「私はこいつの不貞行為など知らんっ!!」

 妻のアメリ―を裏切って自分は知らぬと言い張るヴェーデル伯爵に、エルヴィンは目をピクリとさせる。

「ただ、ヴェーデル伯爵家はアドルフ伯爵付きの執事に財産を盗難されていますね?」
「そ、そうなんです! 私たちは被害者なんです!!」
「安心してください、その盗難した執事も捕らえて今は獄の中にいます」
「よかった、じゃあ、盗まれた財産は戻って……」
「こないですよ」
「え?」

 ヴェーデル伯爵の希望満ちた目と声は、エルヴィンによる冷たい一言で打ち消される。