「さて、ヴェーデル伯爵、あなたは領内の税金を8年前から不正に操作して国に報告していましたね?」
「いえ、そのようなことはございません」
「さらにいえば、先日その額を増やして領内から納められた税金の多くを懐に入れましたね?」
「全く事実ではありません」
「しらを切っても無駄ですよ」

 目を泳がせながらもあくまで不正を否定するヴェーデル伯爵は、額から汗がにじみ出る。
 その様子を見ながら、エルヴィンは手に持っていた帳簿を掲げる。

「ここに領内からの納められた正式な金額が記された帳簿があります。これを見てもまだ言い逃れしますか?」
「なっ!?」

 ヴェーデル伯爵は慌てて自分の持っている書類や帳簿を見る。
 そこにはあるはずの不正の証拠である本物の帳簿がなかった。