執事の一人がドアをノックするも、ヴェーデル伯爵は不正隠ぺいに必死で聞こえていない。

「旦那様、失礼いたします」

 ドアを開ける執事は、ある人物たちを伯爵の部屋の中へと案内した。
 その人物たちは執事に礼を告げて、部屋に伯爵と自分たちだけにするように告げる。
 執事はびくびくおびえながら、「かしこまりました」と告げるとドアを閉めて去っていった。


「くそっ! なんでこんなことに……」

 ヴェーデル伯爵はそれはもう部屋中に紙やら本やらを巻き散らかして必死に帳簿を手元に集める。
 それゆえ、近づいてきた人物たちの気配に全く気付かなかった。

「お手伝いしましょうか?」
「いいっ! 使用人ごときがなんとかできるものでは……っ!!!!!」

 ヴェーデル伯爵の手が止まった。

 なんと伯爵の前で手を差し伸べていたのは、エルヴィンだったのだ。

「ア、アイヒベルク公爵……」

 そしてエルヴィンの後ろには、第一王子クリストフ、横にはシャルロッテがいた。

「さあ、『国の使い』が3名やってまいりましたよ」


 そういってエルヴィンは不敵に笑った──