「できあがった!」

 シャルロッテは伯爵より与えられた手紙の代筆という『ノルマ』を終え、伸びをする。
 すると、突然乱暴に離れのドアが開けられて、外の光が中に差し込んだ。


「ゴホッ! ゴホッ! 何これ、埃臭い……」
「エミーリア……様」

 エミーリアはシャルロッテの実の妹であり、シャルロッテとは違い、本邸で暮らして両親からそれはそれは大切にされている。

「もう! なんで私がこんなことを」

 エミーリアは床にはった蜘蛛の巣を嫌がるように、靴を上げる。

「わざわざ来ていただいて恐縮です。ありがとうございます。……何かわたくしの仕事に不備がございましたでしょうか?」
「不備? そんなことは私にはわかんないわよ。それより、あんたに婚約の話が来ているわよ!」
「わたくしに、婚約……?」


 この婚約がシャルロッテの運命を大きく変えることになる──