「バカかお前は!!!! なんてことをしてくれたんだ!!!!」
「申し訳ございません……」

 ヴェーデル伯爵はエミーリアをすごい勢いで怒鳴りつけ、顔を真っ赤にしている。

「じゃあ、その執事とやらにかすめとられただけでなくアドルフ伯爵令嬢にまで金貨を渡していただと?!」
「はい……」
「それにシャルロッテに手を出したとあれば、『冷血公爵』になにをされるかわからんぞ!! わかっておるのか!!」

 エミーリアは涙を浮かべ、その場にぱたんとへたり込む。

「泣いて済むと思っているのか!! あの金庫は一番財産を多く入れていた金庫なんだ!! うちの財政が傾いてもいいのか?!」
「お許しください、お父様! エミーリアは悪気があったわけじゃないんです」
「悪気があるない関係あるか!! お前にやったジュエルは全て回収させてもらう!」
「そんなっ!!!」
「それと、今後しばらくは家から出ることを禁ずる!」

 エミーリアは目を見開き、大粒の涙をこぼしながら床に手をつく。
 ヴェーデル伯爵はその様子を気にも留めず、近くにあった美術品の長細い壺を叩き割って去っていった。

 シャルロッテのいなくなった実家に、崩壊の気配が漂っていた──