エミーリアはとてもご機嫌に廊下をスキップするように歩いていた。

「やっぱりこのジュエルって最高だわ~♪」

 欲しかったエメラルド色のジュエルを父親に買ってもらったエミーリアは、友人である伯爵令嬢の邸宅に行って見せびらかそうとしていた。
 ドレスに着替えてジュエルを身に着け準備万端なところに、彼女の父親が焦った表情で廊下を走り回っている。
 その様子を見てエミーリアは軽く声をかける。

「どうしたのお父様?」
「エミーリアか! ないんだよ!!」
「なにが?」
「金庫のうちの一つの財産がすっかり中身がなくなっている!」
「え?!」

 エミーリアと父親であるヴェーデル伯爵は急いでその金庫のある部屋へと向かう。
 部屋に入って本棚の隠し細工を外すと、中から金庫があらわれるが伯爵の言う通り中身はからっぽだ。

「なんで?! どうしてなくなっちゃったの??!」
「わからん! この隠し細工のことを知っておるのは、私たち夫婦とお前しかおらん」
「私最近ここの金庫なんて触って……あ……」
「どうした?!」

 エミーリアの動きが止まり、その顔はどんどん青ざめていく。
 「まさか」と小声で言ったあと、エミーリアの身体は震えて止まらなくなった。
 彼女の脳内にシャルロッテへ偽のお茶会の招待状を送ったときのことがよぎる。