──17年前。

 シャルロッテはヴェーデル伯爵家の長女として生を受けた。

「奥様、可愛い女の子ですよ」
「まあ……嬉しい……」

 しかし、抱き上げたメイドが赤子であるシャルロッテに違和感を覚える。

「この子……目が……」

 メイドたちが不思議がる様子を不安に思い、ヴェーデル伯爵夫人は苦しい身体を起こして、メイドが抱きかかえるシャルロッテを覗く。

「──っ!!」

 ヴェーデル伯爵夫人は言葉を失い、手で口元を覆った。

「金色の……目……」

 ヴェーデル伯爵夫人が見たものは、シャルロッテの『金色の目』だった。
 我が子の目を見て恐れおののき、そして力なく彼女はへたり込む。

「奥様……旦那様には……」
「あの方には、私からお伝えします。あなたはこの子をすぐに『離れ』に連れて行きなさい」
「かしこまりました……」


 ヴェーデル伯爵家にはある言い伝えがあった。
 『金色の目』を持つ者が生まれた場合、その子は災いをもたらすと──

 ヴェーデル伯爵は、夫人から生まれた子供が『金色の目』であったことを伝え聞く。
 そして、伯爵は自分の子供であるシャルロッテを一目見ることもないまま、離れに幽閉することを正式に決定した。


「旦那様、奥様。シャルロッテ様はミルクを規定量無事に飲み終え、本日は13時間お休みになりました」
「別に仔細の報告はしなくてよい。生きているかそうでないかだけ伝えよ」
「……かしこまりました」

 生きるぎりぎりの生活を強いられたシャルロッテはこうして毎日を生き延びていった。