アドルフ伯爵邸でおこなわれたお茶会から帰宅したシャルロッテは、エルヴィンの自室の暖炉の前で暖まってた。
　着替えを済ませたシャルロッテの冷えた身体を包み込むように、エルヴィンはそっと毛布を被せる。
　エルヴィンは腕組みをしながら、シャルロッテの傍で彼女を見守っていた。

「……………………」

　シャルロッテは玄関で彼の名を呼んだ以降、口を利くことはなく黙ってされるがままになっていた。
　放心状態ともよべるその痛々しい様子に、エルヴィンは苦い表情を浮かべる。


　やがて、ホットミルクを飲んで身体が暖まってきたのかシャルロッテの顔色も良くなってきた。
　エルヴィンはシャルロッテの少し濡れた髪をなで、静かに話し始める。

「シャルロッテ。お茶会での様子を聞いてもいいかい？」

　エルヴィンはシャルロッテをアドルフ伯爵邸まで運んだ馬車の御者から、シャルロッテがお茶会に参加したということを聞いていた。
　なるべく刺激しないようにそっと優しい声色で子供をあやすように聞く。
　シャルロッテはゆっくりとお茶会での様子を語り始めた。

「アドルフ伯爵令嬢からの招待状を受け取り、私はお茶会に向かいました。お茶会に参加したのはいいものの、私はお茶会に参加などしたことがなく作法がわかりませんでした」
「……」

　エルヴィンはシャルロッテの話を黙って聞いていた。

「やがて、作法がなっていないことで皆様に不愉快な思いをさせてしまいました。それ相応の罰を受けたのです」

　シャルロッテの脳内に、皆の悪意の募った表情や紅茶を投げつける様子、そして自分を怪物を見るような目で見つめる皆の目が思い出される。