庭園を抜けた先でお茶会が開催されており、少なくとも30人の貴族の令嬢や子息がお茶を楽しんでいた。
 誰もが優雅に紅茶を飲んで、皆仲の良い者同士や新しく知り合って親交を深めている者たちなど様々である。
 シャルロッテは到着してから自身がお茶会の作法を知らないことに気づき、どうしていいのかわからずに辺りを見渡した。
 すると、テーブルに一つ紅茶が置かれていたため、シャルロッテはそれを持って飲み干す。

(喉が渇いていたから、ちょうどよかった……)

 その様子を一人の令嬢が見つけてシャルロッテに近づいて来る。

「あら、あなた私のお紅茶を取り上げた挙句にみっともなく獣のように飲み干したの?」

 その令嬢がまわりに聞こえるようにわざと大きな声で言うと、皆シャルロッテのほうに視線を向ける。
 シャルロッテはまた何か自分は間違ってしまったのだと思い、その場で申し訳なさそうに俯いた。
 その様子をにやりと笑いながら見ると、令嬢はそのまま言葉を紡ぐ。

「こ~んな作法もご存じない、それに見まして? こんなにお茶会に不釣り合いな汚らしいお召し物をなさって、一体どこのご令嬢かしら?」
「まあ、ほんと。よくみたら人前に出るなんてとんでもないお召し物」
「きっと間違ってお茶会に入ってきてしまったのよ、招待状なんてないでしょうし」

 三人の品のある令嬢たちがシャルロッテを笑いものにしながら話す。
 「招待状」という言葉が出たため、シャルロッテは慌てて自分に届いた招待状を令嬢たちに見せる。

「しょ、招待状ならこちらにございます!」
「あら、これはうちの紋章が明らかに違いますわ。偽物ですわね」
「まあ! この方偽物の招待状を作って入り込んだの?!」
「えっ! ち、違い……」
「皆さま~! この方、うちのお茶会に無断で入り込んできた怪しい方ですわ! 気をつけてくださいまし!」

 そういうとお茶会の場がざわめき、そしてあちこちから悲鳴もあがる。