「こんにちはコン~って、何があったコン! えええ!? ここがあのクソ土地で有名な“デサーレチ”!? えええ!?」
俺とルージュが畑に行こうとしたときだった。
村の入り口で誰かが叫んでいる。
「ユチ様、来客のようでございます」
「へぇ~、こんなところにも誰か来るんだね」
「うるさいですね。追い返しますか?」
「いやいやいや!」
俺たちが入り口に行くと、小さな女の子がポツンと立っていた。
背丈は俺よりだいぶ低くて幼女みたいだ。
少し大きめのリュックを背負っている。
「もしかして、迷子か? だったら、心配だな。近くに親がいればいいけど……」
「子どもが一人でうろついているのは、それはそれで怪しいでございます」
女の子は村の様子を見ては、しきりに驚いている。
頭の上から、狐みたいな耳が生えていた。
といことは、獣人の狐人族だ。
「こりゃぁ、おったまげたコン! まさか、あのクソ土地がこんなことになるなんてコン! はぁ~、おったまげたコン!」
俺は少し緊張しながら話しかける。
「あ、あの……何かご用ですかね?」
「え? あんた誰コン? こんなヒョロ男、今までいなかったような……ぐぎぃ!」
ルージュが女の子を片手でつまみ上げた。
「ユチ様にそのようなことをおっしゃるとは、良い度胸でございますね。子どもとはいえ、容赦はいたしません」
ルージュはめっちゃ冷たい目をしている。
視線だけで殺せそうだった。
「あ、あちしはフォキシーというコン! 見ての通り、行商で生計を立てているコンよ! こう見えて、もう大人コン! 離してくれコン!」
フォキシーはジタバタして暴れる。
だが、ルージュは知らぬ存ぜぬだった。
「ほ、ほら、ルージュ。この子も悪気があったわけじゃないんだからさ」
「……ユチ様が仰るならば仕方ありませんね」
ルージュが下ろすとフォキシーはホッとしていた。
そのまま、とりあえず家に案内する。
「ゲホッコン。あちしは王都にあるフォックス・ル・ナール商会の会長であるコンよ!」
フォキシーはドンッ! と胸を張った。
その名前は俺も聞いたことがある。
「フォックス・ル・ナール商会と言えば、王国でも三本の指に入るくらいだよな」
「本当にこのクソガキが商会長なのでしょうか?」
「ル、ルージュ!?」
「ク、クソガキって言われたコン! こう見えても、あちしは王宮入りの行商人でもあるコンよ!」
フォキシーは短い手足を振り回して怒っていた。
「え!? 王宮入りってマジ!?」
「マジだコン」
フォキシーは一枚の紙を見せてくれた。
めちゃくちゃドヤ顔している。
「……ホントだ。王様の印が押してあるじゃん。王宮入りの商人なんて、初めて見たな」
「ありがたくしていると良いコン……ぐぎい!」
「ほ、ほら、ルージュ! 持ち上げないでって!」
「……仕方ありませんね」
ルージュはフォキシーを下ろす。
「まったく、油断も隙もないコンね」
「あっ、そうだ。ちょうど作物がたくさん採れたんだが。いくつか買い取ってくれないか?」
しまっておいた作物を出す。
<フレイムトマト>、<ムーン人参>、<フレッシュブルレタス>、<電々ナス>、<原初の古代米>……。
まぁ、今はこんなもんしかねえけど、しゃーねえよな。
「コッ……!」
フォキシーは目を見開いて絶句している。
目玉が飛び出てきそうだ。
というか、半分飛び出ていた。
息も絶え絶えになるくらい興奮している。
「ど、どうした?」
「こ……これは……偉いこっちゃコンね」
そして、うちの畑で採れた作物がどれくらい凄いのか、めっちゃ早口で教えてくれた。
身を思いっきり乗り出してくるので、俺の背中がギンギンにのけぞる。
「この<フレイムトマト>なんて、Aランクダンジョン“ラーバの溶岩洞窟”の最深部に行かないと手に入らないコンよ!」
「お、おお、そうだったんだ……」
「<ムーン人参>はBランクモンスターのキャロットラビットの住処にしかないから、採りに行くには袋叩きを覚悟しないといけないコン!」
「こ、こえ~」
「<フレッシュブルレタス>もAランクダンジョン“ヒンターランドジャングル”を奥に奥に奥に奥に奥に行って、ようやくゲットできるコン!」
「め、めっちゃ奥地にあるんだね」
「こっちの<電々ナス>は生息地にSランクモンスターの雷電ドレイクが住んでいるせいで、滅多に手に入らないコン! 採取に向かった冒険者だって何人も死んでいるコンよ!」
「そ、そいつはヤバいじゃないか」
「<原初の古代米>にいたっては、古代大陸にしか育っていないコン! どうして、ここにあるんだコン!」
フォキシーは感動しているようで、目がウルウルしている。
レアな作物だとは知っていたが、まさかそこまでとはな。
「ど、どうやって、手に入れたコンか? しかも、こんなに状態の良い物を……」
「普通にそこの畑で採れるよ」
「え!? えええええ!? 畑で採れるって、えええええ!?」
フォキシーはさらに驚きまくる。
いや、これ以上驚けるってすげえな。
「み、み、み、見せていただいてもよろしいコンか?」
「ああ良いよ」
「ユチ様に失礼なことはしないように」
俺たちはフォキシーを畑に連れて行った。
領民たちがせっせと収穫している。
相変わらずジャングルみたいになっていた。
「まぁ、見ての通りだな。ぶっちゃけ、採っても採っても減らないんだ」
いきなり、フォキシーはへにゃへにゃと座り込んでしまった。
「お、おい、どうした。大丈夫か?」
「こ、腰が抜けてしまったコン。これは……とんでもない畑でコンよ」
ふーん、デサーレチは思っていたよりすごかったんだな。
ということで、余っている作物は買ってもらうことにした。
「<フレイムトマト>は1つ200万エーン、<ムーン人参>は1本80万エーン、<フレッシュブルレタス>は1個150万エーン、<電々ナス>は1つ300万エーン、<原初の古代米>は1ギラム35万エーンで良いコンか……?」
当然のようにとんでもなく高い金額を言ってきたので、めちゃくちゃビビった。
「たっか! いくら何でも高すぎだろ!?」
「いいえコン! 商売に限っては、あちしはふざけたことはないコンよ! 適正も適正の価格を提示しているコン!」
フォキシーは真剣なようだ。
確かに、王宮入りの商人がウソを吐くとも思えない。
「ル、ルージュ、本当にそんな高値で買ってくれるのかな」
「信じてもよろしいかと」
「じゃ、じゃあ売ろうかな」
「ありがとうコン! これであちしは大儲けコンよ!」
フォキシーは両手を上げて喜んでいる。
「そ、それで、作物はこのまま渡しちゃっていいのか?」
フォキシーは適度な大きさのリュックしか持っていない。
どうやって持って帰るのだろう。
「そのまま頂きたいコン! あちしは収納スキルを持ってるコンから簡単に運べるコン。今、お金渡すコンね」
フォキシーは不思議な空間からお金を出した。
ドサッと札束を置いて、その代わりに作物をしまっていく。
「それでは、あっしはこれで失礼するコンよ。また来るコン」
フォキシーは、ほっくほくの顔をしている。
良い品が手に入って嬉しいようだ。
「ああ、気をつけて帰れよ」
「お帰りなさいませ。次来る時は礼儀をわきまえるように」
「ちょっと待ちたまえ、行商人のお方」
フォキシーが出て行こうとしたら、ソロモンさんが出てきた。
一枚の札を彼女に渡す。
「この紙は何ですかコン?」
「ワシが開発した魔法札じゃよ。転送の印が刻まれているから、破くとここに転送されるぞよ」
「これはまた、素晴らしいおもてなしをありがとうございますコン。それでは、今度こそ失礼するコン」
「お待ちなさい、行商人のお方」
またもやソロモンさんが止める。
「ワシが王都まで転送してしんぜようぞ」
「て……転送までしてくれるコンか!? ……こんなに待遇の良い村だったなんて、知らなったコン」
フォキシーは深く感動しているようだ。
涙をダラダラ流している。
「これも全部、こちらにいらっしゃるユチ様のおかげでございます。王都へ帰ったら色んな人に言いなさい」
「ル、ルージュ!? そういうのは良いから……!」
「了解したコン! こんなに素晴らしいおもてなしをしてくれたコンから、それくらいはお安い御用だコン!」
「<超魔法・エンシェントテレポート>! この者を王都に送りたまえ!」
ということで、フォキシーは笑顔で王都に転送された。
ソロモンさんは満足げな表情だ。
それどころか爽やかな汗までかいている。
「ありがとうございます、ソロモンさん。魔法札だけじゃなく、超魔法まで使っていただいて」
「いや、お礼を言うのはワシの方ですじゃ」
「え? どういうことですか?」
別に、感謝されるようなことはしていないのだが……。
「古の超魔法は気分がスカッとするのですじゃ。しかし、やっぱり攻撃魔法の方が良いですな。どれ、モンスターどもはおらんかな。一発ぶっ放したいのですが……」
ソロモンさんはワクワクした感じで荒れ地の方を見ている。
あの超魔法をぶっぱされたら、村まで吹っ飛びかねない。
「ま、まぁ、それはまた今度でお願いしますね」
◆◆◆(三人称視点)
「いやぁ、あんなに素晴らしい村だとは思わなかったコン」
フォキシーは上機嫌で王宮に向かっていた。
こんなに商売がうまくいったことは、今回が初めてだった。
道に迷ったときはどうなるかと思っていたが、怪我の功名というヤツだ。
「過去最高の売上になるのは間違いないコンね」
何と言っても、最高品質のレア作物を大量に確保できた。
王宮であれば買値の3倍で売れる。
「それどころか、王都まで転送してくれるなんて……こんなの初めてだコンよ」
おまけに、転送費用はタダ。
魔法札までいただいてしまった。
未だに、フォキシーはその破格の待遇に震えていた。
――こりゃあもう、宣伝しまくるしかないコンね。
「知ってるかコン? クソ土地と言われてたデサーレチは、とんでもない豊かな土地だったコン。中でも領主のユチ殿は……」
フォキシーはデサーレチの話を、王宮はおろか王都の商店街まで言いに言いまくった。
住民たちはその話を興味深く聞いては感嘆する。
そして、うわさはサンクアリ家にも届くのであった。
俺とルージュが畑に行こうとしたときだった。
村の入り口で誰かが叫んでいる。
「ユチ様、来客のようでございます」
「へぇ~、こんなところにも誰か来るんだね」
「うるさいですね。追い返しますか?」
「いやいやいや!」
俺たちが入り口に行くと、小さな女の子がポツンと立っていた。
背丈は俺よりだいぶ低くて幼女みたいだ。
少し大きめのリュックを背負っている。
「もしかして、迷子か? だったら、心配だな。近くに親がいればいいけど……」
「子どもが一人でうろついているのは、それはそれで怪しいでございます」
女の子は村の様子を見ては、しきりに驚いている。
頭の上から、狐みたいな耳が生えていた。
といことは、獣人の狐人族だ。
「こりゃぁ、おったまげたコン! まさか、あのクソ土地がこんなことになるなんてコン! はぁ~、おったまげたコン!」
俺は少し緊張しながら話しかける。
「あ、あの……何かご用ですかね?」
「え? あんた誰コン? こんなヒョロ男、今までいなかったような……ぐぎぃ!」
ルージュが女の子を片手でつまみ上げた。
「ユチ様にそのようなことをおっしゃるとは、良い度胸でございますね。子どもとはいえ、容赦はいたしません」
ルージュはめっちゃ冷たい目をしている。
視線だけで殺せそうだった。
「あ、あちしはフォキシーというコン! 見ての通り、行商で生計を立てているコンよ! こう見えて、もう大人コン! 離してくれコン!」
フォキシーはジタバタして暴れる。
だが、ルージュは知らぬ存ぜぬだった。
「ほ、ほら、ルージュ。この子も悪気があったわけじゃないんだからさ」
「……ユチ様が仰るならば仕方ありませんね」
ルージュが下ろすとフォキシーはホッとしていた。
そのまま、とりあえず家に案内する。
「ゲホッコン。あちしは王都にあるフォックス・ル・ナール商会の会長であるコンよ!」
フォキシーはドンッ! と胸を張った。
その名前は俺も聞いたことがある。
「フォックス・ル・ナール商会と言えば、王国でも三本の指に入るくらいだよな」
「本当にこのクソガキが商会長なのでしょうか?」
「ル、ルージュ!?」
「ク、クソガキって言われたコン! こう見えても、あちしは王宮入りの行商人でもあるコンよ!」
フォキシーは短い手足を振り回して怒っていた。
「え!? 王宮入りってマジ!?」
「マジだコン」
フォキシーは一枚の紙を見せてくれた。
めちゃくちゃドヤ顔している。
「……ホントだ。王様の印が押してあるじゃん。王宮入りの商人なんて、初めて見たな」
「ありがたくしていると良いコン……ぐぎい!」
「ほ、ほら、ルージュ! 持ち上げないでって!」
「……仕方ありませんね」
ルージュはフォキシーを下ろす。
「まったく、油断も隙もないコンね」
「あっ、そうだ。ちょうど作物がたくさん採れたんだが。いくつか買い取ってくれないか?」
しまっておいた作物を出す。
<フレイムトマト>、<ムーン人参>、<フレッシュブルレタス>、<電々ナス>、<原初の古代米>……。
まぁ、今はこんなもんしかねえけど、しゃーねえよな。
「コッ……!」
フォキシーは目を見開いて絶句している。
目玉が飛び出てきそうだ。
というか、半分飛び出ていた。
息も絶え絶えになるくらい興奮している。
「ど、どうした?」
「こ……これは……偉いこっちゃコンね」
そして、うちの畑で採れた作物がどれくらい凄いのか、めっちゃ早口で教えてくれた。
身を思いっきり乗り出してくるので、俺の背中がギンギンにのけぞる。
「この<フレイムトマト>なんて、Aランクダンジョン“ラーバの溶岩洞窟”の最深部に行かないと手に入らないコンよ!」
「お、おお、そうだったんだ……」
「<ムーン人参>はBランクモンスターのキャロットラビットの住処にしかないから、採りに行くには袋叩きを覚悟しないといけないコン!」
「こ、こえ~」
「<フレッシュブルレタス>もAランクダンジョン“ヒンターランドジャングル”を奥に奥に奥に奥に奥に行って、ようやくゲットできるコン!」
「め、めっちゃ奥地にあるんだね」
「こっちの<電々ナス>は生息地にSランクモンスターの雷電ドレイクが住んでいるせいで、滅多に手に入らないコン! 採取に向かった冒険者だって何人も死んでいるコンよ!」
「そ、そいつはヤバいじゃないか」
「<原初の古代米>にいたっては、古代大陸にしか育っていないコン! どうして、ここにあるんだコン!」
フォキシーは感動しているようで、目がウルウルしている。
レアな作物だとは知っていたが、まさかそこまでとはな。
「ど、どうやって、手に入れたコンか? しかも、こんなに状態の良い物を……」
「普通にそこの畑で採れるよ」
「え!? えええええ!? 畑で採れるって、えええええ!?」
フォキシーはさらに驚きまくる。
いや、これ以上驚けるってすげえな。
「み、み、み、見せていただいてもよろしいコンか?」
「ああ良いよ」
「ユチ様に失礼なことはしないように」
俺たちはフォキシーを畑に連れて行った。
領民たちがせっせと収穫している。
相変わらずジャングルみたいになっていた。
「まぁ、見ての通りだな。ぶっちゃけ、採っても採っても減らないんだ」
いきなり、フォキシーはへにゃへにゃと座り込んでしまった。
「お、おい、どうした。大丈夫か?」
「こ、腰が抜けてしまったコン。これは……とんでもない畑でコンよ」
ふーん、デサーレチは思っていたよりすごかったんだな。
ということで、余っている作物は買ってもらうことにした。
「<フレイムトマト>は1つ200万エーン、<ムーン人参>は1本80万エーン、<フレッシュブルレタス>は1個150万エーン、<電々ナス>は1つ300万エーン、<原初の古代米>は1ギラム35万エーンで良いコンか……?」
当然のようにとんでもなく高い金額を言ってきたので、めちゃくちゃビビった。
「たっか! いくら何でも高すぎだろ!?」
「いいえコン! 商売に限っては、あちしはふざけたことはないコンよ! 適正も適正の価格を提示しているコン!」
フォキシーは真剣なようだ。
確かに、王宮入りの商人がウソを吐くとも思えない。
「ル、ルージュ、本当にそんな高値で買ってくれるのかな」
「信じてもよろしいかと」
「じゃ、じゃあ売ろうかな」
「ありがとうコン! これであちしは大儲けコンよ!」
フォキシーは両手を上げて喜んでいる。
「そ、それで、作物はこのまま渡しちゃっていいのか?」
フォキシーは適度な大きさのリュックしか持っていない。
どうやって持って帰るのだろう。
「そのまま頂きたいコン! あちしは収納スキルを持ってるコンから簡単に運べるコン。今、お金渡すコンね」
フォキシーは不思議な空間からお金を出した。
ドサッと札束を置いて、その代わりに作物をしまっていく。
「それでは、あっしはこれで失礼するコンよ。また来るコン」
フォキシーは、ほっくほくの顔をしている。
良い品が手に入って嬉しいようだ。
「ああ、気をつけて帰れよ」
「お帰りなさいませ。次来る時は礼儀をわきまえるように」
「ちょっと待ちたまえ、行商人のお方」
フォキシーが出て行こうとしたら、ソロモンさんが出てきた。
一枚の札を彼女に渡す。
「この紙は何ですかコン?」
「ワシが開発した魔法札じゃよ。転送の印が刻まれているから、破くとここに転送されるぞよ」
「これはまた、素晴らしいおもてなしをありがとうございますコン。それでは、今度こそ失礼するコン」
「お待ちなさい、行商人のお方」
またもやソロモンさんが止める。
「ワシが王都まで転送してしんぜようぞ」
「て……転送までしてくれるコンか!? ……こんなに待遇の良い村だったなんて、知らなったコン」
フォキシーは深く感動しているようだ。
涙をダラダラ流している。
「これも全部、こちらにいらっしゃるユチ様のおかげでございます。王都へ帰ったら色んな人に言いなさい」
「ル、ルージュ!? そういうのは良いから……!」
「了解したコン! こんなに素晴らしいおもてなしをしてくれたコンから、それくらいはお安い御用だコン!」
「<超魔法・エンシェントテレポート>! この者を王都に送りたまえ!」
ということで、フォキシーは笑顔で王都に転送された。
ソロモンさんは満足げな表情だ。
それどころか爽やかな汗までかいている。
「ありがとうございます、ソロモンさん。魔法札だけじゃなく、超魔法まで使っていただいて」
「いや、お礼を言うのはワシの方ですじゃ」
「え? どういうことですか?」
別に、感謝されるようなことはしていないのだが……。
「古の超魔法は気分がスカッとするのですじゃ。しかし、やっぱり攻撃魔法の方が良いですな。どれ、モンスターどもはおらんかな。一発ぶっ放したいのですが……」
ソロモンさんはワクワクした感じで荒れ地の方を見ている。
あの超魔法をぶっぱされたら、村まで吹っ飛びかねない。
「ま、まぁ、それはまた今度でお願いしますね」
◆◆◆(三人称視点)
「いやぁ、あんなに素晴らしい村だとは思わなかったコン」
フォキシーは上機嫌で王宮に向かっていた。
こんなに商売がうまくいったことは、今回が初めてだった。
道に迷ったときはどうなるかと思っていたが、怪我の功名というヤツだ。
「過去最高の売上になるのは間違いないコンね」
何と言っても、最高品質のレア作物を大量に確保できた。
王宮であれば買値の3倍で売れる。
「それどころか、王都まで転送してくれるなんて……こんなの初めてだコンよ」
おまけに、転送費用はタダ。
魔法札までいただいてしまった。
未だに、フォキシーはその破格の待遇に震えていた。
――こりゃあもう、宣伝しまくるしかないコンね。
「知ってるかコン? クソ土地と言われてたデサーレチは、とんでもない豊かな土地だったコン。中でも領主のユチ殿は……」
フォキシーはデサーレチの話を、王宮はおろか王都の商店街まで言いに言いまくった。
住民たちはその話を興味深く聞いては感嘆する。
そして、うわさはサンクアリ家にも届くのであった。