「「それでは……生き神様の御業にかんぱーい!!」」
「「かんぱーい!」」

 カチン、コチンと盃のぶつかる音が響く。
 魔王軍を無事に倒して、姫様たちを救ったので大きな宴が開かれていた。

「生き神様の手にかかれば、魔王軍も敵じゃないですぜ!」
「一瞬で尖兵を倒しちゃうんだもんなぁ!」
「この先どんな敵が来ようと、生き神様の近くにいれば大丈夫ですね!」

 何はともあれ、特に怪我人がいなくて安心した。
 隣に座っているエルフェア様に話しかける。

「姫様たちも無事で良かったですね」
「ええ……これも全部、ユチ様のおかげですわ」

 さっきからやたらと姫様がくっついてくるのだが、どうしたんだ?
 ああ、そうか。
 きっと、裸の男が珍しいんだな。

「……さ、エルフェア様。ユチ様もお疲れなので、あまりくっつかれては良くありません」
「いや、もう少しだけ……あ~れ~」

 ルージュが丁寧に、しかし強めに引き剥がす。
 きっと、教育上よろしくないと考えたのだろう。

「では、その隙に我が……」
「貴様は荒れ地にでも行きなさい」
「なんだと~、それならどちらがユチにふさわしいか勝負だ」
「良いでしょう」
「ほ、ほら、二人とも仲良くね……」

 みんなでわいわいしている時だった。
 屋敷の前で、パシュウウンと何かが弾けるような音が炸裂した。

「な、なんだ!? また敵襲か!?」
「「急いで、状況を把握するんだ!」」

 領民たちも厳しい顔になる。
 みんなで慌てて外に出た。

「久しぶりコンー! 元気にしてたかコンー?」
「え、フォ、フォキシー? ど、どうして?」

 そこには、デサーレチに一番最初に来た来客のフォキシーがいた。

「フォックス・ル・ナール商会のデサーレチ支部を作ることにしたんだコンよ! ユチ殿には支部長になっていただくコンからね!」
「デ、デサーレチ支部!? 支部長!?」

 さらにパシュウウンと破裂音が炸裂しまくる。

「お久しぶりです、ユチ殿! また来てしまいました!」
「ネ、ネーデさん! 仲間の方々も!」
「どうでしょう、ウンディーネの里と正式に交流しませんか? 里長もユチ殿に会いたがっていますよ!」
「こ、交流!?」

 パシュウウン!

「ユチ殿! おでたちをここで修行させてくれんか!?」
「ウェクトルさん!? それにドワーフのお仲間も!」
「デサーレチみたいな最高の採石場は他にないかんな! ちょっとばかし厄介になるぞ! 家なら自分で作るから安心しぃな!」
「す、住むってことですか!?」

 パシュウウン!

「ユチ殿! デスドラシエルの本格的な調査をやらせてください!」
「レジンプトさん!? 後ろにいらっしゃる人たちはいったい……すごい頭が良さそうですが」
「学院中の名だたる学者を集めてきましたぞ! そうだ! ここにオーガスト王立魔法学院デサーレチ校を建てましょう!」
「デ、デサーレチ校!?」

パシュウウン!

「ユチ殿! お元気でしたか!?」
「ブ、ブレイブさん!? 〔キングクラウン〕のメンバーまで!」
「僕たちからお願いがあるのです! ここを魔王軍撃退の拠点とさせていただけませんか!?」
「きょ、拠点~!?」

パシュウウン!

「ユチさん! また会いたくて来てしまいました!」
「カ、カロライン様~!?」
「国政の勉強のため、しばらくここに住みます」
「いぇぇえぇ!?」

パシュウウン!

「ユチ殿! 我が国と友好条約を結んでください! 一緒に魔王軍を倒してほしいのです!」
「ジ、ジークフリードさんまで!?」
「そのうち、我が国の軍隊も連れてきますね」
「そ、そんな軽く……!?」

 あっという間に、半裸のまま囲まれる。

「「我らが救世主よ! ぜひ、お願いします!」」
「あ、いや、ちょっ」
「ユチ様のお隣は、私めの特等席でございます。皆さま方、とりあえずはお引き取りをお願いします」

 揉みくちゃにされていく中、座右の銘が薄っすらと思い出された。

 ――人生なるようになる…………よな?