「さて、ここが鉱山か」
「例外なく、ここもクソ鉱山でございますね」
しばらく歩いて、俺たちは山の麓に着いた。
ルージュとソロモンさん、領民も一緒だ。
危ないから来なくていいと言ったんだが、「御業を拝見したい」ということで、みんなついてきてしまった。
「ワシらは”死の鉱山デスマイン”と呼んでおりますじゃ。見ての通り、ここも近寄れないくらい、ひどい有様なんですじゃ」
デスマインはそれほど高くはなく、小高い丘って感じだな。
そこかしこに洞窟があるような山だった。
だがしかし、例のごとく瘴気がぐじゃぐじゃに溜まっている。
空高く飛んでいる鳥ですら、山に近づけないくらいだ。
「鉱山っていうくらいですから、鉱石とか魔石が採れたりするんですか?」
「昔は採れたらしいんですがの……今はサッパリですじゃ。それどころか、近づくことさえできませんでしたな」
「そうですか。じゃあ、さっそく入ってみますかね」
「お気を付けくださいませ」
なるほど……こいつはヤバいわ。
ちょっと入っただけでわかった。
洞窟の中には目の前が見えないほど、瘴気が溜まりに溜まりまくっている。
「うわぁ……何も見えないじゃん」
「とんでもないクソ洞窟でございますね」
俺たちだけじゃなく、領民たちもドン引きしていた。
「見ろ! 瘴気があんなにたくさんあるぞ!」
「いつの間に、こんなに溜まっていたんだ!」
「お願いいたします、生き神様! もはや、あなた様じゃないと進むことさえできません!」
俺は洞窟へ入っていく。
領民たちは期待に満ち溢れた目で俺を見ていた。
いや、背中に視線がビシバシ当たって痛いんだわ。
とりま、さっさと終わらせよう。
瘴気がテリトリーに入ったところで、魔力を込める。
<全自動サンクチュアリ>発動!
『ギギギギ……!』
すぐさま、瘴気の群れがブルブル震え出した。
俺は魔力を込め続ける。
頼む、早く消えてくれ。
領民たちの視線が痛いから。
『キャアアアアア!』
例のごとく、女の子のような悲鳴を上げて、瘴気はすうう……と消えていった。
それを見て、領民たちが大喜びする。
「さすがは生き神様だ! あっという間に、浄化してしまわれたぞ!」
「こんな御業が見られるなんて、生きてて良かったよ!」
「ああ、ありがたや! ありがたや!」
バンザーイ! バンザーイ! と歓喜の声がこだました。
「ユチ様、振り返って足元をご覧くださいませ」
「え、足元?」
後ろを見ると、洞窟の地面がキラキラ光っていた。
青や赤、黄色に光っていたりする。
「なんじゃこりゃ?」
拾ってみると、キレイな石だ。
「こ、これは宝石じゃありませんかの?」
ソロモンさんが慌てて拾い上げた。
ギラギラ光っている。
「え、宝石……ですか?」
「そうでございますじゃ! まさか、ただの道にこんなにたくさん落ちているなんて!」
ソロモンさんの言葉を聞いて、領民たちも気づいたようだ。
「おい、これはルビーじゃないのか!?」
「こっちにはサファイヤがあるぞ!」
「ここにはオパールが転がってるじゃないか!」
領民たちは大喜びで宝石を拾い集める。
宝石は拾っても拾っても、有り余るほど転がっていた。
「ルージュも少し持って帰ったら?」
「お言葉ですが、私めはそのような物に興味はございません」
「あっ、そうなのね」
そういえば、ルージュはあまりアクセサリーとか着けていなかった。
宝石よりキレイなドレスとかの方が良いのかな。
「私めの興味はユチ様のみに向けられております」
「は、はい……そうですか」
落ちている宝石はどれもこれも、すでに磨き上げられているかのようにギランギランに輝いている。
しばらく歩くと、水が溜まっている場所に出てきた。
小さな湖みたいだ。
たぶん、雨水が溜まっているんだろうな。
当然の如く、瘴気が溜まりまくっていた。
領民たちもギョッとしたように眺めている。
「マジかよ、なんつう瘴気の塊だ」
「恐ろしいまでに汚染されています」
「ひでえ……知らないうちにこんなに溜まりやがって」
湖の瘴気はじわじわと、洞窟の中を這いずり回っていた。
どうやら、ここが瘴気の源らしい。
「雨水と一緒に瘴気が溜まって、山全体に瘴気が移動しているようだな」
「デスマインを完全に浄化するには、このクソ湖の浄化も必須でございますね」
ま、まさか……。
「さあ、皆さま! ユチ様の御業のお時間でございます! お集まりくださいませ!」
ルージュはまた石の上に乗って演説している。
どうしてそう都合よく台があるのか……俺はもう諦めていた。
「生き神様の御業のお時間だぞー!」
「こうしちゃいられませんわ! みんな、集まって!」
「神聖なる沐浴のお時間だ! 見逃したら一生の損だぞ!」
瞬く間に領民が集まってくる。
「ル、ルージュ。湖は結構深そうだよ」
「ご心配なく、水深はユチ様の腰くらいまででございます」
ルージュが近くに落ちていた、木の枝らしい棒を湖に差し込んで教えてくれた。
確かに、俺の腰くらいまでの深さのようだ。
というか、なんで木の枝まで落ちているんじゃい。
「水は結構冷たいかも」
「ご心配なく。適度な冷たさでございます」
俺は水の中に手を入れる。
冷たくて気持ちよかった。
「皆さまもお待ちかねでございます」
「せ、せめて、領民の前でまた裸を晒すのだけはイヤだよ」
「お脱ぎできないのであれば、私めが脱がさせていただきます」
有無を言わさず、ルージュが服を脱がしにかかってくる。
恍惚とした表情だった。
「待て待て待て! 自分で脱ぐ! 自分で脱ぐから!」
仕方がないので、俺は服を脱ぐ。
ポチャンと湖に入った。
よし、<全自動サンクチュアリ>!
魔力を込めながら湖の中を進んでいく。
ちょうど中心にでかい瘴気の塊が浮かんでいた。
『ギギギギ……!』
俺が近寄っただけで苦しみだした。
やっぱり、どんなに大きくても効き目がバッチリなんだな。
早く消えようね。
『キャアアアアアア!!』
やがて、瘴気はあっさり消えてなくなった。
わあああ! と洞窟が盛り上がる。
これでこの鉱山も自由に出入りできるな。
「「よーし、さっそく採掘を開始するぞー! 生き神様への供物を捧げるんだー!」」
領民たちはカンカンと採掘を始めた。
供物という言い方は気になるが、どんな鉱石が採れるのか俺も楽しみだった。
――――――――――――――――
【生き神様の領地のまとめ】
◆“キレイな”死の鉱山デスマイン
村から少し離れたところにある小高い山。
木々は少なく、そこかしこに洞窟があるのが特徴。
それほど高くはなく、地質的にも登りやすい。
生き物が近づけないほど、瘴気に汚染されていた。
ユチのおかげで無事に浄化された。
何が採れるかはお楽しみ。
「例外なく、ここもクソ鉱山でございますね」
しばらく歩いて、俺たちは山の麓に着いた。
ルージュとソロモンさん、領民も一緒だ。
危ないから来なくていいと言ったんだが、「御業を拝見したい」ということで、みんなついてきてしまった。
「ワシらは”死の鉱山デスマイン”と呼んでおりますじゃ。見ての通り、ここも近寄れないくらい、ひどい有様なんですじゃ」
デスマインはそれほど高くはなく、小高い丘って感じだな。
そこかしこに洞窟があるような山だった。
だがしかし、例のごとく瘴気がぐじゃぐじゃに溜まっている。
空高く飛んでいる鳥ですら、山に近づけないくらいだ。
「鉱山っていうくらいですから、鉱石とか魔石が採れたりするんですか?」
「昔は採れたらしいんですがの……今はサッパリですじゃ。それどころか、近づくことさえできませんでしたな」
「そうですか。じゃあ、さっそく入ってみますかね」
「お気を付けくださいませ」
なるほど……こいつはヤバいわ。
ちょっと入っただけでわかった。
洞窟の中には目の前が見えないほど、瘴気が溜まりに溜まりまくっている。
「うわぁ……何も見えないじゃん」
「とんでもないクソ洞窟でございますね」
俺たちだけじゃなく、領民たちもドン引きしていた。
「見ろ! 瘴気があんなにたくさんあるぞ!」
「いつの間に、こんなに溜まっていたんだ!」
「お願いいたします、生き神様! もはや、あなた様じゃないと進むことさえできません!」
俺は洞窟へ入っていく。
領民たちは期待に満ち溢れた目で俺を見ていた。
いや、背中に視線がビシバシ当たって痛いんだわ。
とりま、さっさと終わらせよう。
瘴気がテリトリーに入ったところで、魔力を込める。
<全自動サンクチュアリ>発動!
『ギギギギ……!』
すぐさま、瘴気の群れがブルブル震え出した。
俺は魔力を込め続ける。
頼む、早く消えてくれ。
領民たちの視線が痛いから。
『キャアアアアア!』
例のごとく、女の子のような悲鳴を上げて、瘴気はすうう……と消えていった。
それを見て、領民たちが大喜びする。
「さすがは生き神様だ! あっという間に、浄化してしまわれたぞ!」
「こんな御業が見られるなんて、生きてて良かったよ!」
「ああ、ありがたや! ありがたや!」
バンザーイ! バンザーイ! と歓喜の声がこだました。
「ユチ様、振り返って足元をご覧くださいませ」
「え、足元?」
後ろを見ると、洞窟の地面がキラキラ光っていた。
青や赤、黄色に光っていたりする。
「なんじゃこりゃ?」
拾ってみると、キレイな石だ。
「こ、これは宝石じゃありませんかの?」
ソロモンさんが慌てて拾い上げた。
ギラギラ光っている。
「え、宝石……ですか?」
「そうでございますじゃ! まさか、ただの道にこんなにたくさん落ちているなんて!」
ソロモンさんの言葉を聞いて、領民たちも気づいたようだ。
「おい、これはルビーじゃないのか!?」
「こっちにはサファイヤがあるぞ!」
「ここにはオパールが転がってるじゃないか!」
領民たちは大喜びで宝石を拾い集める。
宝石は拾っても拾っても、有り余るほど転がっていた。
「ルージュも少し持って帰ったら?」
「お言葉ですが、私めはそのような物に興味はございません」
「あっ、そうなのね」
そういえば、ルージュはあまりアクセサリーとか着けていなかった。
宝石よりキレイなドレスとかの方が良いのかな。
「私めの興味はユチ様のみに向けられております」
「は、はい……そうですか」
落ちている宝石はどれもこれも、すでに磨き上げられているかのようにギランギランに輝いている。
しばらく歩くと、水が溜まっている場所に出てきた。
小さな湖みたいだ。
たぶん、雨水が溜まっているんだろうな。
当然の如く、瘴気が溜まりまくっていた。
領民たちもギョッとしたように眺めている。
「マジかよ、なんつう瘴気の塊だ」
「恐ろしいまでに汚染されています」
「ひでえ……知らないうちにこんなに溜まりやがって」
湖の瘴気はじわじわと、洞窟の中を這いずり回っていた。
どうやら、ここが瘴気の源らしい。
「雨水と一緒に瘴気が溜まって、山全体に瘴気が移動しているようだな」
「デスマインを完全に浄化するには、このクソ湖の浄化も必須でございますね」
ま、まさか……。
「さあ、皆さま! ユチ様の御業のお時間でございます! お集まりくださいませ!」
ルージュはまた石の上に乗って演説している。
どうしてそう都合よく台があるのか……俺はもう諦めていた。
「生き神様の御業のお時間だぞー!」
「こうしちゃいられませんわ! みんな、集まって!」
「神聖なる沐浴のお時間だ! 見逃したら一生の損だぞ!」
瞬く間に領民が集まってくる。
「ル、ルージュ。湖は結構深そうだよ」
「ご心配なく、水深はユチ様の腰くらいまででございます」
ルージュが近くに落ちていた、木の枝らしい棒を湖に差し込んで教えてくれた。
確かに、俺の腰くらいまでの深さのようだ。
というか、なんで木の枝まで落ちているんじゃい。
「水は結構冷たいかも」
「ご心配なく。適度な冷たさでございます」
俺は水の中に手を入れる。
冷たくて気持ちよかった。
「皆さまもお待ちかねでございます」
「せ、せめて、領民の前でまた裸を晒すのだけはイヤだよ」
「お脱ぎできないのであれば、私めが脱がさせていただきます」
有無を言わさず、ルージュが服を脱がしにかかってくる。
恍惚とした表情だった。
「待て待て待て! 自分で脱ぐ! 自分で脱ぐから!」
仕方がないので、俺は服を脱ぐ。
ポチャンと湖に入った。
よし、<全自動サンクチュアリ>!
魔力を込めながら湖の中を進んでいく。
ちょうど中心にでかい瘴気の塊が浮かんでいた。
『ギギギギ……!』
俺が近寄っただけで苦しみだした。
やっぱり、どんなに大きくても効き目がバッチリなんだな。
早く消えようね。
『キャアアアアアア!!』
やがて、瘴気はあっさり消えてなくなった。
わあああ! と洞窟が盛り上がる。
これでこの鉱山も自由に出入りできるな。
「「よーし、さっそく採掘を開始するぞー! 生き神様への供物を捧げるんだー!」」
領民たちはカンカンと採掘を始めた。
供物という言い方は気になるが、どんな鉱石が採れるのか俺も楽しみだった。
――――――――――――――――
【生き神様の領地のまとめ】
◆“キレイな”死の鉱山デスマイン
村から少し離れたところにある小高い山。
木々は少なく、そこかしこに洞窟があるのが特徴。
それほど高くはなく、地質的にも登りやすい。
生き物が近づけないほど、瘴気に汚染されていた。
ユチのおかげで無事に浄化された。
何が採れるかはお楽しみ。