しかし、ヨアケと出会って一ヶ月が経った頃、それは突然起こった。


──こちら地点……SK9……。……にトラブル……。移動を試み…………どう……う……ど……が……ように……。


 「ヨアケ……?」


僕の声が深い海に落ちる。


波は僕の唇から零れ落ちたヨアケの名を攫い、うら寂しい静けさが耳の奥に広がった。


ヨアケの声が聞き取れない。チューニングの合わないラジオのように、耳障りなノイズが邪魔をする。


何か、ヨアケによくないことが起こったんだ。


ヨアケは無事なんだろうか。怪我はしていないだろうか。


彼がいた探索隊は全滅したと言っていた。


もし同じことが彼にも起こったら……。


僕は祈るように両手でメッセージを握り締め、額に当てた。


食い縛った歯の隙間から、細い息が漏れる。


僕はヨアケのいる星がどこにあるのかを知らない。


ヨアケが今何をしていて、これまでにどんな人生を歩んできたのかも、何一つ知らない。


ヨアケに何かが起こったとしても、手を差し伸べる術を僕はひとつも持っていないのだ。


僕が話していたのは僕の存在を知らない彼方の探索者で、ヨアケが話していたのは、ヨアケの中にしか居ない想像の僕だった。


それでも、少なくとも地球から観測できる一番遠い天体よりも遠い場所にいるヨアケと、僕はもう一度話がしたいと願った。


例えその祈りが一方的だとしても、何億光年と離れた大切なひとを、僕はなくしたくなかった。


でもその日から、ヨアケのメッセージは届かなくなる。