「──地球から一番遠い天体は134億光年先にあると言われている。光年っていうのは復習だけど、万物の中で最も速い光が一年間に進む距離。時間のことじゃないからな。間違えるなよ」


先生は言葉を続け、窓の外を眩しそうに眺めた。


季節に取り残された一枚の枯れ葉が、枝の先で震えていた。


「つまり、今俺たちが見ている星の光は、何千年、何億年前の光だということだ。星の光は幾年も宇宙を旅して、ようやく俺たちの目に映る。地球に光が届く頃には、その星が消滅していることもある──おい、どうした?」


僕は気が付くと、椅子を蹴倒し唇を震わせ、机についた手のひらを握り締めていた。ドクドクと、心臓が深いところで鳴っている。


ヨアケはもう、この世界にいないのだ。


その命が永遠でない限り、どんな死を迎えようとも。


僕が拾った何億年も過去の孤独は、僕がどれだけ祈っても、もう未来を描くことはない。


ヨアケの命はもう、死を知ってしまっているのだ。