──こちら、地点ABBF3.5。君の星から俺は見えますか。俺の声は届いていますか。言葉は通じるんだろうか。もし届いたら、何か合図してくれると嬉しい。それじゃあ。


星が綺麗な夜だった。


水彩絵の具が溶けて広がったような空からは、白く冴えた月が僕を見下ろして、街はその銀の光に縁取られているみたいだった。


冷たい空気が肺を焼くから、僕は自分の肺の位置を正確に知ることが出来た。


当たり前だけど、理科の授業で習ったところと同じところにあった。


手のひらから発せられる声に、僕は白い息を吐き出しながら視線を落とす。


それは何かの機械のように見えたし、柔く発光した生き物のようにも見えた。