「よし、まずは畝作りからはじめるか」
自分の体に「俊敏力強化」を付与し、鍬に「筋力強化」を付与してから、サクッと大地に鍬を振り下ろす。
瞬間、ズゴゴゴッと鍬を入れていない数メートル先まで土が掘り返された。
「おお、一気に行けたな」
ちょっと驚いてしまった。これも付与魔法の効果なのだけれど、ちょっと特殊な「付与魔法の合わせ技」だ。
第一属性の「火属性」である人体への俊敏力強化と、第三属性の「金属性」である鍬への筋力強化を合わせると、通常の付与効果に加えて「範囲拡張」の二次効果が発生するのだ。
この「合わせ付与」に関してはまだ研究最中で、どの組み合わせでどんな効果があるのか完全にわかっていない。
この研究も農園をやりながら解明していくつもりだ。
僕はさらに持久力強化でスタミナを上げてからガツガツと地面を耕していく。
畑作業なんてはじめての経験だけど、付与魔法のお陰で全く疲れることがなくて気持ちがいい。天気もいいし、なんて最高な日だろう。
いい感じで耕した後、軽く水分補給をしてから「畝」を作る。
畝というのは作物を植える細長い直線状に土を盛り上げたアレだ。ベッドの役割があって、農作物を育てる上で欠かせない……とかなんとか。
本当ならまずは土壌改良して作物が育ちやすい土を作る必要があるのだけれど、まぁ、試しだからそこは割愛した。
ちなみに、呪われた地で作物を育てる鍵になるのが瘴気への耐性を強化する付与魔法の「|免疫力強化(エンチャント・ブラッド)」なんだけど、効力は二日ほどで切れてしまう。
なので、効果時間を伸ばすために土にも対瘴気用の付与魔法をかけてあげる必要がある。そこあたりは本格的に畑を作るときにしっかりとやる予定だ。
とりあえず一本だけ畝を作って、「|生命力強化(エンチャント・ソウル)」と「俊敏力強化」、それに「免疫力強化」を付与した大根の種を植えてみる。
畝に手のひらサイズくらいの浅い穴を作って、そこに種を五つ入れる。
一つじゃなくて五つ植えるのは、生育にばらつきが出るからだ。
ここから発芽して子葉が完全に開いてから三本くらいに間引きして、最終的に一本にする。そうすれば大きくて美味しい大根が出来上がる。
種を植え、桶に汲んできた赤紫色の水をササッと撒いてしばし観察。
少しお腹が空いてきたけれど、採れたて野菜が食べたいので我慢だ。
買ってきた肥料をいつでも使えるように木箱に小分けしてから、焚き火の準備をしていると、早速畝に変化が現れた。
ニュニュっと小さな芽が出てきたのだ。
「……おっ、成功だ」
なんだか嬉しくなってしまった。
魔導院で呪われた地の土壌を使って実験をしていたから成功することはわかっていたんだけど、やっぱり実際に芽吹いたのを見ると嬉しくなる。
そうこうしているうちにポコポコと芽が出てきた。
やばいやばい。早く間引きしないと。
急いで小さめの芽を間引いて「三本立ち」にする。そこから更に大きくなったタイミングで一本に。
みるみる葉が茂ってきて地面が盛り上がってきた。
だけど、ベランダ菜園で作った大根よりもちょっと小ぶりだな。
まぁ、土壌を作っていないからこんなものか。
多くの作物は「弱酸性」を好むので、買ってきた「苦土石灰」という肥料を入れたり「馬糞」を入れて弱酸性の土を作る必要がある。
「そろそろかな?」
芽が出て十分も経たないうちに、地面から大根の頭が少し見えてきた。
そろそろ収穫時だ。
普通に育てるとなると何週間もかかるのに、わずか十分足らずでできちゃうなんて、本当に素晴らしい。
早速葉っぱを握ってヨイショと引っ張ると、簡単に大根が出てきた。
少し小ぶりだけど、真っ白で形も良い。
これは美味しそうだ。
「えへへ、早速料理しよっと」
飲料水を入れた鍋を焚き火の火にかけ、沸騰するのを待つ傍らで大根をざく切りしていく。
沸騰した鍋に大根と三種ほどの干し肉を入れて、ワイン、塩、コショウ、生姜……それに旨味を強化する「生命力付与」をかけてから蓋をしてグツグツ煮込む。
そして、待つこと十分。
「うほっ……」
蓋を開けると湯気と共に何とも美味そうな香りが広がった。
付与魔法のおかげか、干し肉の旨味が大根にいい感じに染みて綺麗なきつね色になっている。
早速、大根のひとつをナイフで取って、ヒョイッと頬張る。
「ハフハフ……う、うまっ!」
思わず声が出てしまうくらいにうまかった。
この世界の料理は、素材の味が弱いからか塩気でごまかしてるものが多いけれど、これは濃厚な大根の味が主張してきて実にうまい。
さらに、苦味がないのが良い。
ああ、この世界に醤油があったらなぁ。
いやいや、それは贅沢すぎるか。このままでも十分うまいしな。
やっぱり採れたての野菜って美味しい。
作物が育たないって言われている呪われた地でこの味が再現できるなんて幸せすぎる。
無理難題を押し付けてくる上司も、嫉妬にまみれた先輩も誰もいない土地。
あるのは採れたての最高の野菜と、美味しい料理。
のんびりとした時間が流れる、僕だけの空間。
何をしても、何を作っても自由。
「……ふふ、うふふふふ」
自然と頬が緩み、笑みがこぼれてしまう。
これこそ僕が求めていたのんびり生活。
ああ、スローライフって……マジ最高っ!
自分の体に「俊敏力強化」を付与し、鍬に「筋力強化」を付与してから、サクッと大地に鍬を振り下ろす。
瞬間、ズゴゴゴッと鍬を入れていない数メートル先まで土が掘り返された。
「おお、一気に行けたな」
ちょっと驚いてしまった。これも付与魔法の効果なのだけれど、ちょっと特殊な「付与魔法の合わせ技」だ。
第一属性の「火属性」である人体への俊敏力強化と、第三属性の「金属性」である鍬への筋力強化を合わせると、通常の付与効果に加えて「範囲拡張」の二次効果が発生するのだ。
この「合わせ付与」に関してはまだ研究最中で、どの組み合わせでどんな効果があるのか完全にわかっていない。
この研究も農園をやりながら解明していくつもりだ。
僕はさらに持久力強化でスタミナを上げてからガツガツと地面を耕していく。
畑作業なんてはじめての経験だけど、付与魔法のお陰で全く疲れることがなくて気持ちがいい。天気もいいし、なんて最高な日だろう。
いい感じで耕した後、軽く水分補給をしてから「畝」を作る。
畝というのは作物を植える細長い直線状に土を盛り上げたアレだ。ベッドの役割があって、農作物を育てる上で欠かせない……とかなんとか。
本当ならまずは土壌改良して作物が育ちやすい土を作る必要があるのだけれど、まぁ、試しだからそこは割愛した。
ちなみに、呪われた地で作物を育てる鍵になるのが瘴気への耐性を強化する付与魔法の「|免疫力強化(エンチャント・ブラッド)」なんだけど、効力は二日ほどで切れてしまう。
なので、効果時間を伸ばすために土にも対瘴気用の付与魔法をかけてあげる必要がある。そこあたりは本格的に畑を作るときにしっかりとやる予定だ。
とりあえず一本だけ畝を作って、「|生命力強化(エンチャント・ソウル)」と「俊敏力強化」、それに「免疫力強化」を付与した大根の種を植えてみる。
畝に手のひらサイズくらいの浅い穴を作って、そこに種を五つ入れる。
一つじゃなくて五つ植えるのは、生育にばらつきが出るからだ。
ここから発芽して子葉が完全に開いてから三本くらいに間引きして、最終的に一本にする。そうすれば大きくて美味しい大根が出来上がる。
種を植え、桶に汲んできた赤紫色の水をササッと撒いてしばし観察。
少しお腹が空いてきたけれど、採れたて野菜が食べたいので我慢だ。
買ってきた肥料をいつでも使えるように木箱に小分けしてから、焚き火の準備をしていると、早速畝に変化が現れた。
ニュニュっと小さな芽が出てきたのだ。
「……おっ、成功だ」
なんだか嬉しくなってしまった。
魔導院で呪われた地の土壌を使って実験をしていたから成功することはわかっていたんだけど、やっぱり実際に芽吹いたのを見ると嬉しくなる。
そうこうしているうちにポコポコと芽が出てきた。
やばいやばい。早く間引きしないと。
急いで小さめの芽を間引いて「三本立ち」にする。そこから更に大きくなったタイミングで一本に。
みるみる葉が茂ってきて地面が盛り上がってきた。
だけど、ベランダ菜園で作った大根よりもちょっと小ぶりだな。
まぁ、土壌を作っていないからこんなものか。
多くの作物は「弱酸性」を好むので、買ってきた「苦土石灰」という肥料を入れたり「馬糞」を入れて弱酸性の土を作る必要がある。
「そろそろかな?」
芽が出て十分も経たないうちに、地面から大根の頭が少し見えてきた。
そろそろ収穫時だ。
普通に育てるとなると何週間もかかるのに、わずか十分足らずでできちゃうなんて、本当に素晴らしい。
早速葉っぱを握ってヨイショと引っ張ると、簡単に大根が出てきた。
少し小ぶりだけど、真っ白で形も良い。
これは美味しそうだ。
「えへへ、早速料理しよっと」
飲料水を入れた鍋を焚き火の火にかけ、沸騰するのを待つ傍らで大根をざく切りしていく。
沸騰した鍋に大根と三種ほどの干し肉を入れて、ワイン、塩、コショウ、生姜……それに旨味を強化する「生命力付与」をかけてから蓋をしてグツグツ煮込む。
そして、待つこと十分。
「うほっ……」
蓋を開けると湯気と共に何とも美味そうな香りが広がった。
付与魔法のおかげか、干し肉の旨味が大根にいい感じに染みて綺麗なきつね色になっている。
早速、大根のひとつをナイフで取って、ヒョイッと頬張る。
「ハフハフ……う、うまっ!」
思わず声が出てしまうくらいにうまかった。
この世界の料理は、素材の味が弱いからか塩気でごまかしてるものが多いけれど、これは濃厚な大根の味が主張してきて実にうまい。
さらに、苦味がないのが良い。
ああ、この世界に醤油があったらなぁ。
いやいや、それは贅沢すぎるか。このままでも十分うまいしな。
やっぱり採れたての野菜って美味しい。
作物が育たないって言われている呪われた地でこの味が再現できるなんて幸せすぎる。
無理難題を押し付けてくる上司も、嫉妬にまみれた先輩も誰もいない土地。
あるのは採れたての最高の野菜と、美味しい料理。
のんびりとした時間が流れる、僕だけの空間。
何をしても、何を作っても自由。
「……ふふ、うふふふふ」
自然と頬が緩み、笑みがこぼれてしまう。
これこそ僕が求めていたのんびり生活。
ああ、スローライフって……マジ最高っ!