しばらく園で解決策を考えることにした。
いくつかアイデアは浮かんだものの、決定打に欠けるものばかりだった。
最初に考えたのは、「瘴気で汚染されている土と付与魔法をかけた土を交換する」という方法だった。
大量の土を用意してそこに付与魔法をかけ、皆で手分けして土を入れ替える。
木に直接付与魔法をかけなくても土壌が綺麗になれば植物の自浄作用でブドウの木が蘇るかもしれない。
なんとか行けるか……と思ったけど、この広大な土地をひっくり返すなんて土台無理なのであっさり断念。
もうひとつ考えたは「新しくブドウの木を植樹する」という方法だ。
俊敏力強化の付与魔法をかければなんとかなるし、成木に付与して回るよりずっと時間がかからなくて済む。
だけど、この園にあるブドウの木と同じ数の苗木を用意できるなら他の土地で園を再開したほうが良いよね……ということでこの案も却下。
「ひとまず、枯れ木を再生させながら考えようかな」
悩んでいても状況は何も変わらないし。
ということで、ブドウの木を十本ほど付与魔法で再生させてみた。
六本目くらいまでは順調だったけど、七本目に付与魔法をかけようとしたところで魔力が枯渇してしまった。
もうすこし行けるかなと思ったけど、こんなものか。
この調子だと、軽く一ヶ月はかかりそうだ。
う〜ん。やっぱり単純に付与するだけじゃだめそうだな。
「サタ様」
首を捻っていると、ララノが声をかけてきた。
「……あれ、どうしたのその服?」
さっきまで僕と同じシャツを着ていたのに、白のワンピースに変わっている。袖に刺繍が入っていて凄くおしゃれだ。
「ラングレさんの奥さんにいただいたのですが、どうですか?」
「そうなんだ。凄く似合ってると思うよ」
「ほ、本当ですか? えへへ、嬉しい……」
くすぐったそうに笑うララノ。
ララノ曰く、ブドウ園を助けてくれたお礼のひとつだという。
他にもいくつか女性ものの服をプレゼントされたらしいんだけど、解決策がまだ見つかっていないので少しだけ心苦しい。
「付与魔法のほうはいかがですか?」
「ん〜、まだ壁にぶつかってる感じかな」
「そうですか……でも、あまり根詰めると良くないですよ。少し一緒に農園を散歩してみませんか?」
「散歩か。そうだね。そうしよう」
体を動かすといいアイデアが生まれるかもしれないし。
ということでラングレさんに許可をもらって、ララノと少しブドウ園を歩いてみることにした。
広大な敷地に並ぶ、枯れたブドウの木。
ずっと向こうに小高い丘が見えるけれど、そこにも枯れ木がある。明らかに僕の農園よりも広い面積だ。
現代だったら飛行機を使って農薬散布みたいにばらまいてあげれば行けるのかもしれないけど、そんなものはアルミターナには無いからな。
ドラゴンみたいな空を飛ぶモンスターがいれば話しは変わるけど。
「……ん?」
と、傍を流れる用水路が目にとまった。
あれは何に使う水だろう。
農園だったら作物用の水だろうけど、ブドウ園にも必要なのかな?
「ねぇ、ララノ。あの用水路って何に使ってるかわかる?」
「用水路? あ、あの川のことですか? 多分、ブドウの木にあげてる水じゃないですかね?」
「え? 水をあげる必要があるの?」
ブドウの木って乾燥に強くて雨水だけで十分って話を聞いたことがあるけど。
「他の地域だったら必要ないかもしれませんけど、ホエール地方って雨が少ないのでああやって水を引いて土に水を浸透させてるんだと思います」
「へぇ、そうなんだね」
ホエール地方って、やっぱり雨が少ないんだな。
雨が降らないのに干上がらないのは、山脈地帯が多いからだろうか?
僕の農園にも山脈地帯から川が流れてきているし、そういう場所が多いのかもしれない。
「あの用水路、ちょっと見に行ってもいい?」
「もちろんです」
気になったのでちょっとララノと行ってみる。
用水路は丁度ブドウ園の中央を横断する形で伸びていて、途中で枝葉のように細かく分かれているようだった。
ララノが言っていたとおり、これで水を敷地全体に届けているのだろう。
用水路の入り口には水門のようなものがあって、水の量を調整できるようになっている。雨が降ったときはここを閉めて水をせき止めているみたいだ。
「……あ〜、でも汚染されてるね」
どうやら土壌だけじゃなく、用水路を流れる水も瘴気に汚染されているらしい。
うっすらと赤紫色に染まっていた。
ブドウの木が一本残らず枯れてしまったのは、この汚染水で土壌に瘴気が浸透してしまったからなのかもしれない。
「つまり水でやられた、か……」
ブドウの木は瘴気が含まれる水を吸収してやられてしまった。
だとしたら、逆に水を使って土を綺麗にすることもできるんじゃないかな?
水に免疫強化の付与魔法をかけることができれば、それだけで事足りる。
でも、どうやって?
汚染水はひっきりなしにここに運ばれてきているわけだし、やるとするなら根本から汚染水を綺麗にしてやるしかない。
「汚染水を綺麗に……あっ」
と、頭の中にひとつのアイデアが浮かんだ。
「何か思いつきましたか?」
「ひらめいたよ。お手製の濾過器を作って、流れる水に付与魔法をかけてみよう」
いくつかアイデアは浮かんだものの、決定打に欠けるものばかりだった。
最初に考えたのは、「瘴気で汚染されている土と付与魔法をかけた土を交換する」という方法だった。
大量の土を用意してそこに付与魔法をかけ、皆で手分けして土を入れ替える。
木に直接付与魔法をかけなくても土壌が綺麗になれば植物の自浄作用でブドウの木が蘇るかもしれない。
なんとか行けるか……と思ったけど、この広大な土地をひっくり返すなんて土台無理なのであっさり断念。
もうひとつ考えたは「新しくブドウの木を植樹する」という方法だ。
俊敏力強化の付与魔法をかければなんとかなるし、成木に付与して回るよりずっと時間がかからなくて済む。
だけど、この園にあるブドウの木と同じ数の苗木を用意できるなら他の土地で園を再開したほうが良いよね……ということでこの案も却下。
「ひとまず、枯れ木を再生させながら考えようかな」
悩んでいても状況は何も変わらないし。
ということで、ブドウの木を十本ほど付与魔法で再生させてみた。
六本目くらいまでは順調だったけど、七本目に付与魔法をかけようとしたところで魔力が枯渇してしまった。
もうすこし行けるかなと思ったけど、こんなものか。
この調子だと、軽く一ヶ月はかかりそうだ。
う〜ん。やっぱり単純に付与するだけじゃだめそうだな。
「サタ様」
首を捻っていると、ララノが声をかけてきた。
「……あれ、どうしたのその服?」
さっきまで僕と同じシャツを着ていたのに、白のワンピースに変わっている。袖に刺繍が入っていて凄くおしゃれだ。
「ラングレさんの奥さんにいただいたのですが、どうですか?」
「そうなんだ。凄く似合ってると思うよ」
「ほ、本当ですか? えへへ、嬉しい……」
くすぐったそうに笑うララノ。
ララノ曰く、ブドウ園を助けてくれたお礼のひとつだという。
他にもいくつか女性ものの服をプレゼントされたらしいんだけど、解決策がまだ見つかっていないので少しだけ心苦しい。
「付与魔法のほうはいかがですか?」
「ん〜、まだ壁にぶつかってる感じかな」
「そうですか……でも、あまり根詰めると良くないですよ。少し一緒に農園を散歩してみませんか?」
「散歩か。そうだね。そうしよう」
体を動かすといいアイデアが生まれるかもしれないし。
ということでラングレさんに許可をもらって、ララノと少しブドウ園を歩いてみることにした。
広大な敷地に並ぶ、枯れたブドウの木。
ずっと向こうに小高い丘が見えるけれど、そこにも枯れ木がある。明らかに僕の農園よりも広い面積だ。
現代だったら飛行機を使って農薬散布みたいにばらまいてあげれば行けるのかもしれないけど、そんなものはアルミターナには無いからな。
ドラゴンみたいな空を飛ぶモンスターがいれば話しは変わるけど。
「……ん?」
と、傍を流れる用水路が目にとまった。
あれは何に使う水だろう。
農園だったら作物用の水だろうけど、ブドウ園にも必要なのかな?
「ねぇ、ララノ。あの用水路って何に使ってるかわかる?」
「用水路? あ、あの川のことですか? 多分、ブドウの木にあげてる水じゃないですかね?」
「え? 水をあげる必要があるの?」
ブドウの木って乾燥に強くて雨水だけで十分って話を聞いたことがあるけど。
「他の地域だったら必要ないかもしれませんけど、ホエール地方って雨が少ないのでああやって水を引いて土に水を浸透させてるんだと思います」
「へぇ、そうなんだね」
ホエール地方って、やっぱり雨が少ないんだな。
雨が降らないのに干上がらないのは、山脈地帯が多いからだろうか?
僕の農園にも山脈地帯から川が流れてきているし、そういう場所が多いのかもしれない。
「あの用水路、ちょっと見に行ってもいい?」
「もちろんです」
気になったのでちょっとララノと行ってみる。
用水路は丁度ブドウ園の中央を横断する形で伸びていて、途中で枝葉のように細かく分かれているようだった。
ララノが言っていたとおり、これで水を敷地全体に届けているのだろう。
用水路の入り口には水門のようなものがあって、水の量を調整できるようになっている。雨が降ったときはここを閉めて水をせき止めているみたいだ。
「……あ〜、でも汚染されてるね」
どうやら土壌だけじゃなく、用水路を流れる水も瘴気に汚染されているらしい。
うっすらと赤紫色に染まっていた。
ブドウの木が一本残らず枯れてしまったのは、この汚染水で土壌に瘴気が浸透してしまったからなのかもしれない。
「つまり水でやられた、か……」
ブドウの木は瘴気が含まれる水を吸収してやられてしまった。
だとしたら、逆に水を使って土を綺麗にすることもできるんじゃないかな?
水に免疫強化の付与魔法をかけることができれば、それだけで事足りる。
でも、どうやって?
汚染水はひっきりなしにここに運ばれてきているわけだし、やるとするなら根本から汚染水を綺麗にしてやるしかない。
「汚染水を綺麗に……あっ」
と、頭の中にひとつのアイデアが浮かんだ。
「何か思いつきましたか?」
「ひらめいたよ。お手製の濾過器を作って、流れる水に付与魔法をかけてみよう」