いつの間にか駅舎の時計は進んでいた。あの人と話してる間、私の周りの時間は止まってたように感じていたけどそれは嘘だったみたい。時間はいつも通り進んでいた。

 今度は私が恋を実らせる番。君との恋なんて実るのかな。央士くんに避けられないかな。

 時間になり予定通りの電車に乗る。2両しかない短い電車。乗っている人もまばらだ。皆この電車のレトロさには似合わないスマホをいじっている。しかし私はなにもせず外の景色をただ眺めていた。この車窓から見える綺麗な自然を。

 電車は学校の最寄り駅に着き、そこから少し私の街より何倍も栄えているこの地を歩く。

 教室に入るとしんとしていた。ただ空いている窓から風が吹きカーテンを棚引かせているだけ。でも、このクラスの人の匂いが微かに残っている。いい匂い。思わず深呼吸してしまう。

 たぶんレクは体育館でしてるんだろうと思い、体育館に向かう。

 体育館に近づくと聞き慣れた懐かしい声が聞こえてくる。予想通りだ。

 でも、やっぱり皆で楽しんでるのに入るのは失礼かな。だから私はただ見てるだけにしよう。だけど、横から見てもバレてしまうから体育館の2階にある通路の部分(キャットウォークという名前らしい)から見ることにした。

 私の学校は地域の公民館と体育館が複合されている珍しい形で、2階に行くときも直接1階の体育館に入らずとも2階部分に行けるので、バレずにそこまで行けた。

 だけど上から立って見るのはバレるかもと思いしゃがむ。椅子を並べてできた少し形の崩れた大きな円が見えた。

 私のクラスメートたち。

 なんでもバスケット。何かしらのお題を言って、そのお題に合う人が自分の座っている椅子から動き、他の椅子に座る。そして座れなかった人がお題を出してを繰り返すゲーム。

 前にもこのゲームやったことがあるけどこのクラスはなんでもバスケットが盛り上がるんだよな。

 でも、今日は前よりは盛り上がってない――というか、頑張って盛り上がろうとしていた。なにか自分のいないうちに皆の心を支配してしまうような大きな出来事があったんだろうか。

 なにがあった?

 なに?

 えっ?