「いいですけど……」
反応するまで少し時間がかかってしまった。電車の出発まではまだ15分以上あるし、断る理由もなかったので私はそう言った。
「あの、恋のアドバイスしていただけないでしょうか!?」
さっきよりも何倍もはっきりした口調で男の人は私に向かってそう言ったあと、その人は頭を深く下げた。えっ? 私が恋のアドバイス!? どういうこと!?
私の心の中が一瞬空っぽになる。
駅舎に生ぬるい風が入る。
「あの、私、別に、彼氏がいるわけでも……。顔もかわいいって感じでもないですし……」
私に彼氏がいるわけでもないんですけど……。それに顔だって別にかわいい方には入らないと思うんですけど……。私のクラスにいけば、うさぎみたいに抱きしめたくなる私よりかわいい女子がたくさんいますから。
「いや、彼氏がいるとかじゃなくて……聞いてほしくて。あの、余計かもしれませんけど、貴方、自らかわいくないって言うのは自分に厳しすぎますよ」
「えっ?」
この人の目からして私を好きとかそういうので、『自らかわいくないって言うのは自分に厳しすぎますよ』と言ったんじゃないだろうけれど、男の人からそう言われると冬にあつあつの焼き芋を食べたときに体に広がる熱のようなものを感じる。
「顔以外も愛せるのが、僕にとっての好きだと思いますし」
私は別に自分の顔がかわいいとか思ってなかったから、その私の好きな人――央士くんに告白しようなんて思わなかった。いや、思えなくて、私以外で央士くんが好きな人に告白してほしいいなって思ってた。でも、そんな考え方がこの男の人の言葉で、積み上げた積み木を崩したときのように、私の頭から一瞬にして崩れる。
「じゃあ、私でよければ」
私はこの人に少し救われたような気持ちがして、だからこの人の役にたちたいと思い、少しためらいながらも話を聞くことにした。
その人は失礼しますと言ったあと、私の隣りに座った。私も再び座る。
「あの、今日、僕は、学校が振替休日で休みなんで、これから彼女――といってもまだ相手はただの友達としか思ってないかもですけど……」
その人は庭にきれいな花が咲いたときのように嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに私の方を向いて話した。
「その人とデートみたいなのに行くんです。でも、恥ずかしながらどこに行くかはまだ決まってなくて……。なんか悩んでも答えが出なくて。で、この辺りでどこがいいと思いますか? 1つでいいんで一緒に考えてくれると嬉しいです」
考えないでいくのもそれはそれで面白いデートにはなりそうだけど、でも、この人にとってデート場所が決まってないのは雨の降りそうな日に傘を忘れたときのように不安なんだろう。
「そうですね……。その方はどういうとこが好きなんですか?」
私はまず情報がほしいと思い、その彼女がどういうものが好きなのか聞いてみる。
「えっと、私はその方の温かい心が好きです」
その人は断定するように『です』を使った。あっ、そうじゃなくて……。
「そうじゃなくて……。あの、その方の好きなものとか、場所です」
「あー、すいません、デートの時間が近づいて緊張して」
私の質問の仕方も少し悪かったかもしれないけど、本当に緊張してるみたいだ。見た目からだけでなく、声の感じや話してる内容からもそう窺える。まあ、私がそういう立場だったらそうなってしまうんだろうけど。
「いえいえ、ゆっくりで大丈夫です」
そういうとその人は少し落ち着きを取り戻した。
反応するまで少し時間がかかってしまった。電車の出発まではまだ15分以上あるし、断る理由もなかったので私はそう言った。
「あの、恋のアドバイスしていただけないでしょうか!?」
さっきよりも何倍もはっきりした口調で男の人は私に向かってそう言ったあと、その人は頭を深く下げた。えっ? 私が恋のアドバイス!? どういうこと!?
私の心の中が一瞬空っぽになる。
駅舎に生ぬるい風が入る。
「あの、私、別に、彼氏がいるわけでも……。顔もかわいいって感じでもないですし……」
私に彼氏がいるわけでもないんですけど……。それに顔だって別にかわいい方には入らないと思うんですけど……。私のクラスにいけば、うさぎみたいに抱きしめたくなる私よりかわいい女子がたくさんいますから。
「いや、彼氏がいるとかじゃなくて……聞いてほしくて。あの、余計かもしれませんけど、貴方、自らかわいくないって言うのは自分に厳しすぎますよ」
「えっ?」
この人の目からして私を好きとかそういうので、『自らかわいくないって言うのは自分に厳しすぎますよ』と言ったんじゃないだろうけれど、男の人からそう言われると冬にあつあつの焼き芋を食べたときに体に広がる熱のようなものを感じる。
「顔以外も愛せるのが、僕にとっての好きだと思いますし」
私は別に自分の顔がかわいいとか思ってなかったから、その私の好きな人――央士くんに告白しようなんて思わなかった。いや、思えなくて、私以外で央士くんが好きな人に告白してほしいいなって思ってた。でも、そんな考え方がこの男の人の言葉で、積み上げた積み木を崩したときのように、私の頭から一瞬にして崩れる。
「じゃあ、私でよければ」
私はこの人に少し救われたような気持ちがして、だからこの人の役にたちたいと思い、少しためらいながらも話を聞くことにした。
その人は失礼しますと言ったあと、私の隣りに座った。私も再び座る。
「あの、今日、僕は、学校が振替休日で休みなんで、これから彼女――といってもまだ相手はただの友達としか思ってないかもですけど……」
その人は庭にきれいな花が咲いたときのように嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに私の方を向いて話した。
「その人とデートみたいなのに行くんです。でも、恥ずかしながらどこに行くかはまだ決まってなくて……。なんか悩んでも答えが出なくて。で、この辺りでどこがいいと思いますか? 1つでいいんで一緒に考えてくれると嬉しいです」
考えないでいくのもそれはそれで面白いデートにはなりそうだけど、でも、この人にとってデート場所が決まってないのは雨の降りそうな日に傘を忘れたときのように不安なんだろう。
「そうですね……。その方はどういうとこが好きなんですか?」
私はまず情報がほしいと思い、その彼女がどういうものが好きなのか聞いてみる。
「えっと、私はその方の温かい心が好きです」
その人は断定するように『です』を使った。あっ、そうじゃなくて……。
「そうじゃなくて……。あの、その方の好きなものとか、場所です」
「あー、すいません、デートの時間が近づいて緊張して」
私の質問の仕方も少し悪かったかもしれないけど、本当に緊張してるみたいだ。見た目からだけでなく、声の感じや話してる内容からもそう窺える。まあ、私がそういう立場だったらそうなってしまうんだろうけど。
「いえいえ、ゆっくりで大丈夫です」
そういうとその人は少し落ち着きを取り戻した。