「もしよかったら、連絡先教えて」
涙を我慢して震えている大内優芽にスマホを差し出すと、彼女がズビッと鼻を啜りながら驚いたように顔をあげる。目と口をぽかんと開けた彼女は、なんとも言えない間抜けな顔をしていた。
「リュウガ先輩……?」
「いや。そっちが教えたくなければ別にいいんだけど……」
あまりに茫然と見つめられて、急に自分の行動が恥ずかしくなる。
大内優芽は「夢の中で好きになった」と言ってくれたけど、それはあくまで夢の中のリュウガに惚れたってだけで。現実の俺とどうこうなりたいってことではなかったのかもしれない。
そろそろとスマホを引っ込めようとすると、大内優芽が慌てて俺の手首をつかまえる。
「いえ、知りたいです。まさか教えてもらえると思わなかったからちょっとびっくりしちゃって……。でも、嬉しいです」
大内優芽が、花が咲いたような満面の笑顔を見せる。
事故に遭う前の彼女も、俺が連絡先を教えると言えばこんなふうに嬉しそうに笑っただろうか。そう考えたら胸がチクリと痛む。
カバンの中に手を入れてスマホを探す大内優芽を見つめて少し切ない気持ちになっていると、「あ、あった!」と彼女がスマホを差し出してきた。