「予定合えば行くよ。山口とか、男子メンバーも適当に誘っていい?」
少し考えてから無難な答えを返すと、西田さんが「もちろん」と嬉しそうに微笑んだ。
「桐島くんのバイト先って、どこらへん? もしよかったら、途中まで一緒に帰っていいかな。歩きながらでいいから、予定を教えてほしい」
「ここから十分くらいの場所にあるコンビニ。駅とは反対方向だよ」
「だったら、入口の門のところまで話しながら帰ってもいいかな」
「うん、いいけど」
飲み会の誘いを無難に躱したつもりだったけど、一見おとなしそうな西田さんは意外にもグイグイ押してきた。
同じ方向に向かうのに断るのも不自然なので、西田さんと並んで講義室を出る。
俺の隣を歩く彼女は、ほんのりと頬を赤らめて嬉しそうな顔をしていた。
「桐島くんは、バイトは週に何回くらい入ってるの? 土日と平日だったら、どっちが都合がいい?」
西田さんがスマホに表示したカレンダーを俺に見せながら、にこにこ笑いかけてくる。その表情が、なぜか大内優芽と重なって見えてドキッとする。
西田さんと大内優芽の顔は少しも似ていないのに、俺の隣でにこにこ笑っていた彼女のことを思い出してなんだか切ない気持ちになった。