「そういえば琉駕、最近あの子につきまとわれてないよな」

 バイト先のシフト変更のラインに返信しながら日替わり定食を食べていると、俺の向かいで同じく日替わり定食を食べていた山口が、思い出したようにそう言った。

「あの子って?」

 鯖の塩焼きを箸で突きながら聞き返すと、山口がつり目を細めて眉を顰めた。いつもの倍増しで人相が悪くなっている山口を見て笑うと、「とぼけんなよ」と不機嫌そうに言ってくる。

 山口が言う「あの子」は、もちろん大内優芽のことだ。入学してきてから毎日のように付き纏ってきていた彼女を、俺はもう二週間ほど見かけていない。

「ケンカでもしたのか?」

「もともとケンカするほどの仲じゃない」

 山口からの問いかけに、皿の上でほぐした鯖を口の中に放り込みながら素っ気なく答える。

「なんかどうでもよさそうだな」

「山口こそ、なんであの子のこと気にしてんの? 美人な彼女がいるのに、浮気?」

 冗談交じりに笑うと、山口がムッとしたように眉間に力を入れた。