授業が終わっても雨が弱まることはなく、教授が出て行ってざわつき始めた講義室で、俺は窓のほうに視線を向けながらため息を吐いた。
「雨、やみそうにないな」
立ち上がった山口が、窓のほうに視線を向けながら声をかけてくる。
「だな。バイト前に濡れたくないし、購買寄って傘買うわ」
机に手をついて立ち上がろうとすると、山口が「バイト何時から?」と訊いてきた。
「17時だけど。なんで?」
「いや。もう少しここで待ってたら雨も弱まってくるんじゃないかと思って。ほら、これから夜にかけて晴れになってる」
山口が、スマホの天気予報のアプリを開いて俺に見せてくる。それによると、雨が降るのは18時くらいまで。バイトが終わる深夜には天気は回復していそうだ。
だがそうは言っても、いつやむかもわからない雨を悠長に待っていられるほどの時間はない。
「17時からって言ってもちょっと前には店に着いとかないとだし。購買で傘買ってから向かえば、ちょうどいい時間になるよ。俺、先に行くな」
「あー、だったらさ、琉駕。帰る前に今の講義のノート見せてよ。ちょっと写しそびれたとこあるから……」
立ち上がって行こうとしたら、山口が俺を引き止めてくる。あんまり時間がないと言ってるのに、「だったら」とか意味がわからない。