四限目の授業を受けている途中、何気なく窓のほうに視線を向けた俺は、雨が降っていることに気が付いた。

 今日は授業が終わったあと、17時からコンビニのバイトが入っている。バイト先までは大学から徒歩10分だが……。

「傘ねぇな」

 小声でぼそっとつぶやくと、隣に座っていた山口がちらっと見てきた。

「雨?」

「そう。山口、傘持ってる? 帰りバイト先まで入れて」

「俺も傘ない。それに、今日はサークル行くから」

「あ、そ」

 小声で話していた俺たちのほうに、教授の視線が向けられる。それに気付いた俺と山口は、お互いに口を噤んで机の上のノートに視線を落とした。

 バイトに行くまでに、濡れたくねーな。

 窓の外の雨を気にしながら授業を聞く俺の隣で、山口がコソコソと机の下でスマホを弄り始める。

 カノジョと連絡でも取り合ってるのか、山口はやたらと忙しそうに親指をピコピコ動かしていた。

 授業が終わればサークルで会えるだろうに仲良いな。このまま雨がやまなくても、山口は演劇サークルの美人なカノジョの傘に入れてもらえるんだろう。

 授業終わっても雨がひどかったら、購買にビニール傘買いに行ったほうがいいかもな。

 雨に気を取られてしまった俺は、後半の授業にほとんど身が入らなかった。