「どうしたんだよ、琉駕。急にびっくりするんだけど」

「そうですよ。私はただ、山口先輩に連絡先を聞いとけば、大学内を探し回らなくてもリュウガ先輩が見つけられるから便利だなって思っただけなのに。リュウガ先輩、全然連絡先教えてくれないから……」

 大内優芽が口先を尖らせてぶつぶつ言っている。それを聞いて、「なんだ、そうか」と妙に安心している自分がいて。大内優芽のせいで、俺まで変になりかかっているんじゃないかと焦る。

「山口、ぜったいに連絡先教えんなよ」

 大内優芽からふいっと顔をそらして不機嫌な声を出す俺に、山口が「もう、諦めて教えてやればいいのに」と苦笑いする。

 無言でじろっと睨むと、山口が小さく肩を竦めて唇を歪める。ちょっと意味ありげな山口の引きつった笑みに、俺は軽く舌打ちをした。

 付き纏われて迷惑だと思っているはずの大内優芽の言葉に動揺させられている自分が信じられないし、俺が大内優芽に絆されかけていると山口に勘違いされていることも、なんかムカつく。