「俺なんかより、もっと同じ学部のやつとか先輩と親しくなれるように努力しろよ。学部が違ったらテストの情報共有もしてやれないし、今後ゼミに入ることも考えたら、同じ学部の知り合いがいたほうがなにかと便利だと思うけど」

 定食の唐揚げを齧りながらぼやくように話していると、横顔に大内優芽の視線を感じた。何だ、と思って怪訝なまなざしを向けると、彼女がさっきよりもキラキラとした目で俺を見てくる。

「私のこと心配してくれてるんですか? ありがとうございます」

「ちげーよ!」

 どっちかというと、毎日付き纏ってくる大内優芽への嫌味のつもりで言ったのに。都合のいいところだけ切り取って喜ぶ彼女はポジティブというか……。なんというか、だいぶ頭がおめでたい。

「なあ、山口。こいつ、なんとかして」

 ため息混じりに助けを求めたが、向かいに座る山口は、人相の悪い顔に引きつった笑みを浮かべるだけでなんの解決策も出してくれない。

「あ、そうだ。山口先輩、私と連絡先を交換してくれませんか?」

 俺と山口が話していたら、大内優芽が突然そんなことを言い出した。

 今日まで俺に対して「好きだ」とか「連絡先を教えてほしい」とか言って付き纏ってきたくせに。そんな俺の前で堂々と他の男の連絡先も聞こうとしている大内優芽の軽薄さになぜか少しイラッとする。