「三限目、授業ないの?」

 からあげに箸を突き刺しながら若干苛立った声で訊ねると、大内優芽がぱっと俺を振り向いて目を輝かせた。

「なに……?」

 眉根をよせつつ身を引くと、大内優芽が頬を薄っすらと赤く染めて首を横に振る。

「リュウガ先輩が、少しでも私に興味を持ってくれたことが嬉しくて」

「いや、興味は持ってない。三限目授業ないのか聞いただけ」

「でも、いつもは私がこうして隣に座ってごはん食べてても、何も聞いてくれないじゃないですか」

「だって、興味ないし」

「じゃあ、どうして今日は聞いてくれたんですか? あ、ちなみに今日の三限は教授が研究会のため休講で、四限に出たあと帰宅します」

 大内優芽が弁当を食べる手を止めて、期待のこもったキラキラした目で俺を見てくる。

「あんたの予定が気になったわけではなくて、授業休んでまで俺のことストーカーしにきてるならこえーなって思っただけ。ていうか、ほぼ毎日のように俺と昼メシ食ってるけど、学部に友達とかいないの?」

「それなりに親しい人はいますよ」

「じゃあ、そっちと食べればいいのに」

「私が誰とどこで昼ごはんを食べるかは私の自由でしょう。それに夢の中でも、文句を言われながらも一緒にお昼を食べてるうちに、リュウガ先輩と親しくなれましたから」

 出会ってからずっと一貫して大内優芽が口にする夢の話を、俺は苦笑いで聞き流す。何度も聞かされているうちに、彼女が言う夢の話が本当か嘘かなんてどうでもよくなってきたのだ。