「ていうかさ、弁当持ってるなら、わざわざここ利用しなくてもよくない? 教室とか中庭とか、食べる場所は他にもあるだろ」

「そうですけど、私はリュウガ先輩と一緒にお昼を食べたいので」

「俺は全然一緒に食べたくない……」

 ぼそりと言ってみたが、大内優芽は俺のつぶやきを無視して弁当箱を開くと「いただきまーす」と手を合わせた。

「ほんとうに、毎日何なんだよ……」

 俺の愚痴など気にも留めず、機嫌良く弁当を食べ始める大内優芽。そんな彼女を横目で睨む俺に、山口が同情の眼差しを向けてきた。

「今日もなつかれてるな」

「絡まれてんだよ」

 低い声でぼやいて、舌打ちする。ついでにこれみよがしに大きなため息をついてみたけど、大内優芽は何も言ってこなかった。

 俺のため息だったり、否定的な言葉だったり、都合の悪いものは全部聞こえないフリでスルーする彼女のメンタルの強さに呆れを通り越して感心する。

 大内優芽に連絡先を教えるのを断って以来、彼女は昼時のカフェテリアや大学の図書館、サークルの部室、経済学部の教室と。毎日、隙を見つけて俺を探しにやってくる。

 そうしているうちに、少しずつ俺の行動パターンが読まれてしまっているようで。キャンパス内で彼女に見つかる確率が日に日に高くなってきている。

 授業の空き時間に大内優芽とカフェテリアで遭遇するのだって、今週でもう三度目だ。