「そういえばリュウガ先輩、二週間前に会ったときと髪型変わりましたね。前もかっこよかったですけど、私にはやっぱり夢の中で何度も見てきた今の髪型のほうがしっくりきます。その髪型、似合ってますよね」

 大内優芽に横から顔を覗き込まれて、俺は少し身を引きながら頭の後ろに手をあてた。

 今の髪型のほうが何度も見てきてしっくりくるってどういうことだ……? 

 入学ガイダンスの日から二週間は会っていなかったはずなのに、大内優芽はその間、俺のことをどこかから見てたのか?

 俺が美容室に行ったのは一週間前。茶色に染めていた頭のてっぺんから黒い地毛が見え始めていたから元よりワントーン明るい色に染め直し、いつも担当してもらっている美容師さんに勧められて、ノリでゆるくパーマをかけた。

 同じ学部の友人たちからは「似合ってるけど、なんか見た目がチャラくなった」と褒められたんだかけなされてんだがわからない評価を受けた髪を撫でつつ、大内優芽を見下ろして顔をしかめる。

「初めて会ったときから、あんたがずっと言ってる夢って何? 本気で俺の気を惹きたいくて言ってるんだとしたら、その妄想はヤバい。引く。ていうか、怖い。二週間ぶりに会ったのに、今の俺の髪型のほうが何度も見てきてしっくりくるってどういうこと? あんた、ほんとうはどこで俺のこと知ったの? ストーカー的なやつ? そうだとしたら、まずは学生課に相談に行くけど」

 思わず声を尖らせると、大内優芽の顔から笑みが消えた。