どうすりゃいいんだ。俺が諦めて連絡先を教えれば離れてくれるのか? でも、な……。

 大内優芽を遠ざける方法を考えながら横目にじっと見つめると、彼女がわずかに頬を染めてうつむく。

 変な女だし、「夢の中で会った」って言う話も全く解せないけど、この子が俺を好きだってことは嘘ではないのだろう。目を伏せて照れている彼女の表情からはっきりと好意のサインが伝わってきて、俺は困って頭を掻いた。

 女の子に好意を寄せられること自体は嫌じゃない。これまでに、全然話したこともない子から呼び出されて告白されたこともある。

 だから大内優芽がもっとふつうに接触してきてくれたら、俺も彼女に対してここまで拒否反応を示さなかったかもしれない。

 たとえば、「これまでにどこかで俺を見かけてて一目ぼれした」とか、そんなふうな告白のされ方だったら、多少は理解を示せたと思う。

 だけど、「夢の中で出会って好きになった」とか「夢の中で俺と何回かデートした」なんて、どう考えてもやばい妄想の域だし。そんなこと言ってくる女に連絡先を教えた時点で、今度は「彼氏になってくれた」と勘違いされそうな気がする。

 怪しいから、絶対優しくなんかしちゃダメだ。

 ぐっと目力を入れて睨むと、大内優芽が不思議そうな顔で俺を見てくる。それから「あ」とつぶやくと、まぶしげに目を細めた。