「歩きながらでいいんで、連絡先教えてください」
「いやだよ」
「でも、約束しましたよね。私が全部チラシを配れたら、連絡先を教えてくれるって」
「だから、『考える』って言っただけだ」
「えー、そんなのずるいですよ。リュウガ先輩の連絡先を教えてもらうために、初対面の人にも話しかけてめちゃくちゃ頑張ったのに……!」
「あんたのそういうところ、ほんと怖い……」
「え?」
「別に……。とにかく、俺は君のことよく知らないし、連絡を取り合いたいと思ってない。これ以上つきまとわれても迷惑だから」
キツめの口調で言えばさすがに諦めるかなと思ったけど、大内優芽はあまりこたえていない様子で、呑気にへらへらと笑っている。
「リュウガ先輩がつれないのは夢でも現実でも変わりませんね。せっかく二週間ぶりに会えたんだから、少しは愛想よくしてくれてもいいのに」
「会えたんじゃなくて、そっちが勝手に俺のテリトリーを侵略してきたんだろ」
「侵略って、私、怪獣か宇宙人か何かですか?」
冷たい態度で邪険に扱っているつもりなのに、ふふっと笑う大内優芽はなんだか楽しそうだ。
大内優芽に半ば追いかけられるようにしながら歩いているうちに、大学の校舎の外に出てしまう。このままだと、ほんとうに駅までついてこられそうな勢いだ。