「せっかくお会いできたので、リュウガ先輩の連絡先を知りたいです」
「え、なんで?」
今名前を知ったばかりの得体の知れない女と連絡先なんか交換できるはずがない。
スマホを差し出してくる大内優芽を見下ろして顔を引きつらせていると、彼女が鈍感そうな顔でへらっと笑いかけてきた。
「だって、これからはちゃんとリアルでデートしたいじゃないですか。そのためには、たしかな連絡手段が必要でしょ」
「いやいや、なんで俺が出会ったばかりの君とデートしなきゃいけないの」
「リュウガ先輩のことが好きだからです」
呆気にとられる俺に、大内優芽がにこにこと笑いかけてくる。
「いや、今出会ったばかりだし、俺は君のことは別に……」
「出会ったばかりじゃないですよ。何度も会ってたじゃないですか」
「夢のなかで……?」
「はい、夢のなかで」
大内優芽が無邪気に微笑む。その笑顔に、頬がピクピクと引きつった。
どうやら俺は、新学期早々変な女に目を付けられたらしい。