「せっかく会えたので、大内さんじゃなくて『優芽』って呼んでください。夢の中で私を助けてくれたときみたいに」
顔を引き攣らせる俺に、大内優芽が無邪気に笑いかけてくる。
「ゆめ、夢……? は!? ゆめ?」
言われたことがよくわからず混乱していると、大内がなぜか恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「あ、でも。呼び捨てにされるのはまだあんまり慣れてないから、いきなり連呼されるのは恥ずかしいかも」
もじもじしながら上目遣いに見てくる彼女に、俺の脳内で警告音が鳴る。
待て待て。これはたぶん、ちょっとおかしなやつだ。
さーっ全身が粟立つのを感じて、大内優芽につかまれた手首を捩じって無理やりに振りほどく。
「もう一回聞くけど、あんたは俺とどういう知り合い? 俺とどこで会って、これまでに俺とどういう接点があったのか、もうちょい詳しく教えてほしいんだけど」
警戒して少し強めの口調で訊ねる俺に、大内優芽がにこにこと笑顔を返してきた。
「だから私、事故に遭いかけたところをリュウガ先輩に助けてもらったんですよ。夢の中で」
「夢の中……?」
「はい、そうです」
「まさか、さっき言ってたランチとかデートの話ももしかして……」
「はい。全部、夢の中のできごとです」
大内がにこっと笑って頷く。その反応を見た俺は、なんだか急に眩暈がしてきた。