「ところでティナ。そちらの方々は?見たところ人間族のようだけど……」
 再会を喜び涙を流していた三人だったがある程度落ち着いたところでティナの父がこちらに気づいた。

「この人たちは私を助けてくれたグランとその妹さんのカノンだよ!ここまで送ってきてくれたの!」

「はじめまして。グラン・レア・ベルセリアです」

「妹のカノン・レア・ベルセリアです」

「!娘を助けていただきありがとうございます。グラン様、カノン様。私はティナの父のレイです。この村の長のようなものをやっています」

「本当になんとお礼を言ったらいいものか……。グラン様、カノン様。ティナの母でレイの妻のシェリルです」

「「よろしくお願いします。レイさん、シェリルさん」」

「ティナも素敵な出会いがあったみたいだね」

「うん!助けてくれたのがグランでよかったよ〜」

「でも勝手に村から出ていったらダメでしょ?イリーナにティナが拐われたって聞いた時は心臓が止まったかと思うくらい驚いたのよ?」

「うう……ご、ごめんなさい……」

「もう本当に心配してたんだから!」

「シェリル。ティナも反省していることだし、客人を放って置いてまで説教する場面じゃないと思うな」

「っ!す、すみません!私ったらティナのことになるとどうしても周りが見えなくなってしまって……」

「それだけティナお姉様のことを愛してるってことなので謝ることじゃないですよ!ねっ!お兄様?」

「そうだね。僕たちもここに着くまでにティナからいろいろと聞いていましたからお二人からたくさん愛情を受けてきたことはわかっているつもりです」

「「ティナ……」」
 グランがそんなことを伝えると二人は嬉しそうにティナのことを見ていた

「それより!早く家に入ろう!いつまでも立ち話しているわけにも行かないし……」
 そんな空気に耐えきれなかったのかティナが顔を赤くしていた。

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 その後ティナを誘拐した犯人について説明するとレイとシェリルは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「なるほど盗賊たちが……」
 
「はい。特に理由などは聞いていなかったんですけど衛兵たちが問い詰めたところ依頼を受けたと判明したので……。なにか心当たりなどありますか?」

「……多分ティナの技能だと思います」

「技能……ですか」

「お二人はティナの技能について聞かれましたか?」

「心が読めるという事しか……」

「それでは話が早いです。心を読む技能は発展型(タイプ:グロウ)なんです」

発展型(タイプ:グロウ)ってどんな技能なんですか?」

「簡単に言うと成長していく技能って感じだな。俺の時空魔法は初めからいろいろ使えたでしょ?それ対して発展型(タイプ:グロウ)は最初こそたいしたことはできないものの成長すると必ず強くなることができるいわゆる大器晩成型の技能なんだ」

「なかなかこの技能は発現しないためとても珍しいこともあります」

「とても珍しい上に強力になることが確定しています。そんなティナを貴族や国が放っておくはずがありません。この技能が発現してからお見合いや婚約願いの手紙が大量に届くようになったんです」

「ひどい時だと私より30歳ぐらい年上のおっさんとかから来るんだ……」

「そんな人が貴族にいたのですね……。ロリコン、怖いです……お兄様」

「そんなこんなでティナの意思を尊重して断り続けていたら遂に村の周りに怪しい人がうろつき始めて……」

「対策を考えているうちに拐われてしまったと」

「そうなんです……」

「だったら再発防止のいい案があります!」

「本当ですか?カノン様」

「ええ!皆さんうちの領地に引っ越せば良いのです!土地はまだ空いてるはずだしここからも近いから……」

「それはとてもありがたいのですが……私たち獣人族はこの大樹とともに生きてきました。私たちの代でここを手放すようなことはできませんから」

「そうだったのですね……。私も勉強不足でした……。簡単にこんな提案をしてしまってすみません」

「大丈夫ですよ。このことはそんなに知られていることじゃないですから」

「でもそれならいけるかもしれない…」

「「グラン様?」」
 グランはカノンの案は一部使える部分があると思ったのである。

「確かにうちの領に来れば誘拐の危険性は一気に下がります。ですが大樹が無防備になってしまう。だったらここの村をベルセリア領にしてしまえば両方とも達成できると思うんです。形式上はベルセリア家が収めてることになるだけで今までと何にも変わらない生活ができます」

「それはありですねお兄様!」

「後は父様に相談してみないとわかりませんが……」

「そんな夢のような話があってもいいんでしょうか?」

「ここまで乗りかかった船ですしティナのことは僕たちも心配ですから。僕の方からも父様に掛け合ってみます」

「ありがとうございます!グラン様」

「って事で少し呼んできますね」

「「へっ?」」
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「はじめまして、グランの父のカール・レア・ベルセリア騎士爵だ」

「母のニーナ・レア・ベルセリアよ。よろしくお願いね」
 グランは転移で一旦自宅へと戻り説明をして二人を連れてきた。

「このたびは人間族が迷惑をかけて申し訳ない」

「そ、そんなお顔をおあげ下さい。カール様は何も悪くないのですから」

「しかし同じ娘を持つ親としていきなり拐われていなくなるのは辛かっただろう。ゆえにこうして人間族を代表しているのだ。どうか受け入れてはくれないだろうか」

「わかりました。謝罪を受け入れます。ところで話は変わるのですが……お二人はどこから?」

「グラン様がここを出て10分もしないうちに帰ってこられたので……」

「これは他言無用でお願いしたいんだが、グランは時空魔法という固有技能が使える。その魔法に転移があったまでだよ」

「な、なるほど」
 どういう事?と疑問に思ったレイとシェリルだったがティナは知ってるようなので後で聞こうと思いそこは流すことにした。
 その後親同士の懇親会は続いた。

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 お互い仲を深めていくうちに解決策も無事決まったようであった。
 最もグラン達は村を回っていたので何があったかはわからないが。
 そして時間は過ぎ、気がつくと外はもう日が暮れ闇に包まれ始めていた。

(おっともうこんな時間か……)

「そろそろ日も暮れますしあまり長居しても悪いですから。そろそろ私らは帰りますね」

「ああっ!もう日が暮れてしまったのですね。この辺は夜になると魔物が活性化するのでいくら転移ができようと危険なのです。今夜は家に泊まっていかれますか?」

「ええ!ぜひ泊まっていってください!まだまだお礼もし足りないですし心をこめておもてなしします!」

「どうします?お父様」

「では今晩だけお言葉に甘えさせて頂こうかな」

「やったー!もう少しグランとカノンと一緒にいれるよ!」

「よろしくお願いします!レイ様、シェリル様、ティナお姉様」
そんなこんなでベルセリア一家の滞在延長が決まった。