「なっ!何が起こっている?」

「ダメです!頭!刃が通りやしねぇ」

「何っ!?奴の技能(スキル)は全て封じたはずっ!今更出来ることなんて!」

「でも無理なもんは無理でさぁっ!魔力の流れも感じねぇ」
 実際にはグランの技能(スキル)は全て封じられていた。
 それでも防御の力が働いていた。

「一体どんな技能(スキル)を使ったと言うんだ?この技能(スキル)のおかげで俺たちは今まで生きてきたと言うのにっ!」
 今までは普通の冒険者や傭兵だったかもしれない。
 だがグランは別物だった。
 グランは転生者で何よりも神々より寵愛を受けし者である。
 そんな人に“普通”の技能(スキル)が通常の効果を発揮する訳がない。
 本来技能封印(スキルシール)は相手のほぼ全ての能力を封印する。
 決してスキルだけではないのだ。

(何が起こっているんだ?)
 グランはいつまでたっても痛みが襲ってこないことを不思議に思い目を開けてみるとそこにはものすごい光と共に走馬灯のようなものが見えていた。

(あれは陽葵と茉奈?しかもこの前の夢に出てきた時と同じ……。走馬灯じゃない?)

『はる兄さん。いざと言うときは私たちがこのブレスレットを通じて守ります』

『だから安心して過ごしてね!また遊びに行こうね!』

(これはあの夢の続き?にしてはリアル過ぎるしタイムリー過ぎだ)

 これは神々さえも予想しなかった奇跡だった。
 双子の兄を想う気持ちが起こした。
 いずれにせよ守りは完璧だとわかったグランは反撃に出ることにした。

(確かタパス様がスキルを封じられたり、魔力が尽きかけている時の戦闘方法について技能神アラミラ様と一緒に教えてくれたな・・・。それで行くか!)

「悪いな。技能(スキル)が無くても俺は戦えるんだ。発動っ!憑依:剣神 ヤマト!」

「!?!?!?」

 グランが教わったのは奥の手中の奥の手。
 神々や精霊から寵愛を受けていることかつ事物を司る神であることを条件に使えるいわば裏技だった。
 世間一般には知られていないため街中でこの力を使うといきなり神の名前を叫ぶのでさぞ白い目で見られるだろう。
 日本で言う厨二病だろうか。

「お前いきなり何を言い出したんだ?死を実感しておかしくなったか?」

「それはお前らがその身を持って確かめるんだな。喰らえ!衝撃斬っ!飛斬っ!崩壊(ブレイク)!」

「くっ……こんなところで……」
 グランが放った神にも等しい一撃で男達は一瞬にして意識を刈り取られた。

(発動者がやられると技能(スキル)も停止するんだな)
 念のため技能(スキル)が使えることを確認したグランは男達を武装解除したのち物質創造で創り出した鉄線で縛り上げた。

(これでよしっと。あとは中にいる人を救助するだけだな。残党が乗っている可能性もあるから気をつけよう)
 グランが馬車を開けるとロープで両手足を拘束されている獣耳と尻尾をもった少女がいた。

「っ!」

「怖かったね。もう大丈夫。僕は君の味方だよ」

「……た、助けてくれるの?」

「ああ、もう大丈夫だ」

「……っ、……ぅうわぁぁぁん!怖かっ、た!もう、家族に会え、ないんじゃないかって!」

「怖かったね。一人で不安だったよね。でも僕が元々いた場所に返してあげるよ。名前は?」

「私は……」
 少女は自分のことについて語り出した。